◆1980年という年は、色々なジャンルのアニメ作品が、出揃ってきた感がある年ではなかったかと個人的に思うのですが、ここで紹介しておきたい作品は、3月15日に劇場公開された『火の鳥2772愛のコスモゾーン』です。
★故手塚治虫氏が、昭和二十九年の連載開始以来、発表誌を移しながら、「生命とは何か」という人間の根源的なテーマを描いて、手塚治虫のライフワークといわれた同名の原作を映画化したものです。この作品は今までに発表されてきた原作の映画化ではなく、映画用に書き下したオリジナル作品となります。脚本は手塚治虫とテレビアニメを中心に活動してきた杉山卓の共同執筆、総監督に手塚治虫、監督は杉山卓、撮影は八巻磐がそれぞれ担当しました。
【火の鳥2772 愛のコスモゾーン・製作公開データ】
原案、構成、総監督 : 手塚治虫
製作 : 市川喜一、明田川進
監督 : 杉山卓
脚本 : 手塚治虫、杉山卓
アニメーション・ディレクター : 中村和子、石黒昇
レイアウト・メカ作画監修 : 湖川友謙
美術 : 松本強、伊藤信治
設定 : もとのりゆき、篠原博士
メカデザイン : 御厨さと美
音楽 : 樋口康雄
ヴァイオリン : 千住真理子
演奏 : ORCHESTRA-2772
撮影、特殊効果 : 八巻磐
音響 : 明田川進
原画 : 高橋信也、西村緋祿司、金山明博、湖川友謙、中村和子、鈴木伸一、石黒昇、坂口尚、手塚治虫 ほか
監督助手 : 安濃高志
背景 : 小林プロダクション、小林七郎 ほか
設定ブレーン : 小松左京、ジェラルド・クック、フレデリック・ショット
オープニング・タイトルバック作画 : 渡辺義夫
モデル人形製作 : 飯沢喜七
配給: 東宝
公開:日本1980年3月15日 アメリカ、シンガポール、フィンランド
上映時間:122分
【火の鳥2772 愛のコスモゾーン・キャスト】
ゴドー:塩沢兼人
オルガ:三輪勝恵
サルタ:熊倉一雄
ブラック・ジャック:伊武雅之
ロック:池田秀一
レナ:藤田淑子
バン(ヒゲオヤジ):大塚周夫
ピンチョ:高橋和枝
クラック:大竹宏
イート卿:久松保夫
ブーン:小林修
ボルカン:森山周一郎
火の鳥:竹下景子
【火の鳥2772 愛のコスモゾーン・ストーリー】
22世紀の初頭、世界は統一されて地球連邦となりました。社会としては極度に合理化され、そこは元老院に属するひとにぎりのエリート達によって支配される世界でした。
人間は人口過剰を防ぐために、限られた人数だけが試験管ベビーとして生まれます。一人一人が、コンピューターの精密な適性検査によって将来の仕事を決められ、専門教育を受けて育てられます。育児ロボット・オルガに育てられ、宇宙ハンターとして成長したゴドー・シンゴもそんな一人だったのです。
宇宙ハンター訓練所で、射撃の腕を教官のボルカンに見込まれて、特訓を課されるが、そのいずれにもゴドーは優秀な成績をおさめます。生きた宇宙人を使った射撃訓練以外は・・・
ボルカンに叱責されても、彼はおびえている宇宙人を目の前にして、銃の引き金を引くことができなかったのです。手本と称して宇宙人達を粉々に撃ち砕くボルカン。その夜、悪夢にうなされるゴドーの心の中に、この管理体制に対する反発が芽起き始めていたのです。彼を理解しようとするオルガ。翌朝、訓練所の前でゴドーとボルカンが衝突した時、ロボットのオルガの心の中に今までにない感情がわき起こります。オルガは次の瞬間、ボルカンの乗った車を高くさし上げて走り出し、橋の欄干に置いてきてしまいました。
ある日ゴドーは、科学センター長官のロックに、特別任務として謎の宇宙生命体2772の捕獲を命令される。見返りとして街の外へ出る許可をもらうゴドー。初めて見る海や花に「きれいだ」と心動かされます。
ゴドーはロックの許婚である上流階級の娘レナと恋愛事件を起こし、罰としてアイスランドの強制労働キャンプへ送られてしまうことになります。キャンプは非常に過酷な環境だった。そこで出会った奇妙な老人、サルタ博士は政府に批判的な言動をしたかどでキャンプ送りになったのです。
サルタにより、地球が亡びかけていることを知ったゴドー。彼がロックに捕獲するよう命令された宇宙生命体2772、つまり"火の鳥"は、宇宙生命のすべてにかかわるエネルギー体で、サルタは火の鳥の生き血を元老院がひとりじめにしようとしている、自分は世界中の人間、生き物にそれを分析してわけあたえてやりたいと言うのだった。
サルタの言葉にうたれたゴドーは、協力することを申し出た。そこにはゴドーの居場所を知ってやって来たオルガも、レナのペットだった留学生の宇宙人ピンチョもいた。大地震の混乱に乗じて宇宙船スペース・シャーク号を奪うことに成功したゴドー達は、伝説の火の鳥を捕まえ、地球を救うべくはるか広大な宇宙へ飛び立ちます。
サルタの旧友バンの紹介で、火の鳥の居場所を知る宇宙人プークスと出会ったゴドー達は、一路火の鳥の元へと向かいます。だが彼らの前に、火の鳥に敗れたスペース・シャークの同型船の残骸とボルカンの死体が現れます。そして、ついに火の鳥が姿を現し、スペース・シャークに襲い掛かる。火の鳥は凶暴で、小惑星より大きい変幻自在の業火であり、宇宙の力そのものの火の鳥の前に人類の力たるスペース・シャークの武器はまったく歯が立たず、ゴドー達がボルカンの二の舞となるかに思われたとき、宇宙の力よりなお強い力が奇跡を起こす・・・
▲火の鳥2772 愛のコスモゾーン (手塚 治虫) 1980 ((*SUBTITLES: English, Español*))
🧐本作を当時大学生でしたが、劇場で観ての感想・意見としては、手塚治虫氏の凄さと『火の鳥』の作品の表現の難しさを感じました。本作はアニメ作としての評価はまずまずとして、人間というより『命』そのものをテーマにしているので、大きすぎて創る人、観る人それぞれでいろいろなとらえ方があると思います。しかし、手塚治虫氏は生涯、この難しいテーマを描き続けていたわけですから賛否両論があがることも想定しての製作活動であったと思います。やはり、手塚治虫氏は漫画家を超えた偉大な作家のひとりです。
手塚治虫氏は医師でもあったわけですけれども、今生きておられたらコロナ禍と戦う人間を、社会をどう表現していたでしょうかね?ふとそんなことを思いました。(^_^;)

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