◆◆1980年に劇場アニメ映画『地球へ…』が4月26日、公開されています。今日は劇場版『地球へ・・・』の紹介です。『地球へ…』は、竹宮惠子による日本のSF漫画作品、およびこれを原作とした派生作品です。第9回(1978年)星雲賞コミック部門、第25回(1979年)小学館漫画賞少年少女部門を受賞しています。
【地球へ・・・制作、公開データ】
監督:恩地日出夫
脚本:恩地日出夫、塩田千種
アニメーション演出:笠井由勝
キャラクターデザイン・作画監督:須田正己
メカデザイン:ひおあきら、須田正己他
音楽:佐藤勝
制作:東映動画
監督:恩地日出夫
脚本:恩地日出夫、塩田千種
製作:今田智憲
出演者:井上純一、沖雅也、秋吉久美子、志垣太郎他
音楽:佐藤勝
主題歌:ダ・カーポ
撮影:吉村次郎、池田重好
編集:鳥羽亮一、片桐公一
配給:東映洋画
公開:日本 1980年4月26日
上映時間:119分
製作国:日本の旗 日本
言語:日本語
配給収入:4.4億円(参考:「邦画フリーブッキング配収ベスト10作品」『キネマ旬報』1981年(昭和56年)2月下旬号、キネマ旬報社、1981年、 117頁。“註・〔1980年〕12月末現在。最終配収ではありません。
【地球へ・・・ストーリー(プロローグ)】
地球から遠く離れた育英惑星アタラクシアに住むジョミー・マーキス・シンは、もうすぐ14歳の誕生日「目覚めの日」を迎えます。 「目覚めの日」を境に子供は親(政府から派遣された養父母)の元を巣立ち、コンピュータによる「成人検査」を受けてそれぞれの進路に進んでいくのです。 だがジョミーは、そんなシステムに納得がいかず、大人になりたくないと毎日思っていたのです。
それに最近毎晩おかしな夢を見るようにもなっていた。 青年と盲目の美少女が語り合い、少女がテレパシーを使って自分の中にある地球の映像を青年に見せるのでした。 青年は人類発祥の地、地球(テラ)に対して激しく思いを語るが、自分は地球へ行くまで生きられない。だれか自分の遺志を継いでくれる人物がいれば、と語る内容だった。
そんなもやもやした心境のまま「目覚めの日」を迎え「成人検査」を受けているそのさなか、ミュウの長(おさ)ソルジャー・ブルーにより検査を妨害される。 わけのわからないまま家に帰ろうとするが、ジョミーはなぜか政府から射殺されそうになる。 その危機を救ったのが、ソルジャー・ブルーの部下リオだった。
リオから、実はジョミーもミュウなのだといわれ、衝撃を受けるのでした。 ミュウについては、おかしな能力を持つ反社会的な存在という情報しか知らないジョミーは、自分がそのミュウだといわれてもその事実を受け入れることができず、暴力沙汰を起こしたり荒れた行動をとり続けていました。 それでもしばらく生活をしていくうちに、ミュウへの迫害は幼い子供にまで及び、地下に潜む母艦に逃げ込むしかないことを理解し、ほかのミュウにも少しづつ心を開いていくのでした。
ジョミーは夢で見た広間にいる青年と盲目の美少女=ソルジャー・ブルーと占い師フィシスに出会います。
ブルーはSD体制の本拠地でもあり人類やミュウの故郷でもある地球へ行くのがミュウの悲願なのだと語るが、ジョミーを選んだ理由には触れないままジョミーに自分の記憶や知識などを継承させようとする。 ジョミーは勝手に異質なもの(ブルー)が自分の中に介入することへの恐怖と怒りによってブルーの申し出を拒否しようとします。
食い下がるソルジャー・ブルーを完全に拒否しようとしたその時、ジョミーはミュウとして覚醒します。 その未知数の能力によって生身のままアタラクシアの大気圏までジャンプしたジョミーを追い、ブルーは最後の力を振り絞ってジョミーを連れ戻します。
ジョミーの覚醒と引き換えにソルジャー・ブルーの命は尽き果てようとしていました。 ブルーが死ぬ直前、ジョミーはテレパシーによって彼の深い悲しみを知ることになります。 ジョミーは、新たなソルジャーとしての宿命を背負う決意を固めます。そして最初の命令を下します。
「われわれは、地球へ向かう」・・・
こうして、遥か遠く長い地球への旅路がはじまるのでした・・・
▲地球へ・・・ 劇場版 予告編
🧐竹宮恵子の不朽の同名名作コミックを原作に繰り広げられる劇場用SFアニメーション映画です。はるか遠い未来、特殊能力を持つがゆえに迫害されつづける“ミュウ”の人々は、遥か彼方の地球を目指す旅にでます。
しかし人間は、彼らを執拗に追いかけ、その絶滅を図ろうとします。
監督の恩地日出男さんは、実写感覚の斬新な長回しのカメラワークを駆使し、コマ数を多めにとることで従来のアニメとは異なる独自のテイストをだしていました。また黒澤映画などでも知られる映画音楽界の巨匠・佐藤勝氏が、ここでは初のアニメ音楽を担当していますが、その効果は絶大なものがあり、一見すると重くなりがちな雰囲気をもつ本作に、躍動感を見事に奏でています。志垣太郎、井上純一、秋吉久美子、沖雅也ら顔出しの俳優をメイン・キャストに起用し、複雑で繊細なストーリーを2時間の枠に収めきった脚本で、生命の讃歌を描き切っているあたりは大いに評価したいです。中盤に惑星ナスカ崩壊シーンの壮絶な悲劇も秀逸の表現であったと思います。なお、原作が連載中での制作だったため、結末はオリジナルのものとなっていました。
『地球へ・・・』は、例えていうなら芳醇なワインのような香りのする味わい深い劇場アニメ作品の一つです。

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