◆◆1982年10月30日に、劇場映画『Future War 198X年』が公開されています。当時は、本作品は問題作として扱われていたのを思い出し、今回はこの時期に本作を紹介したいと思います。
【Future War 198X年・本作の概要】
本作の制作時期に国際的な問題となっていた米ソの冷戦激化を題材にして制作された劇場アニメ作品です。プロデューサーの吉田のコメントによれば、近未来戦争の恐怖を訴えつつ、『地獄の黙示録』や『復活の日』の面白さを取り入れて完成させた作品といわれています。(劇場用パンフレットより)
ほぼ同時期に制作された劇場版『宇宙戦艦ヤマト』シリーズで実績を持つ舛田利雄や勝間田具治を監督として起用したほか、制作に際しては『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』のポスターのイラストなどでも知られていた生頼範義にイメージイラストを依頼してつくられました。
当初、制作主体として予定されていた東映動画は、労働組合が「内容が好戦的である」として制作をボイコットし、これはマスコミでも取り上げられました[『劇場アニメ70年史』徳間書店、1988年。]。このため、作画などの実制作は大半が外注スタッフによって行われています(詳細は#反対運動とその反響を参照)。
【反対運動と本作の反響】
制作準備段階だった1981年2月、東映動画の労働組合は、本作の準備台本1冊を入手し、これがコピーされて職場で回覧されました[「『198X』問題はこうして起こった」『アニメージュ』1982年4月号、徳間書店、p123(後述の記事ページ内の囲み記事]。現場の従業員からは「戦争がカッコよくしかもリアルに描かれ危険」という意見が出され、組合は教職員組合やPTAにも呼びかける形で反対運動を開始した[「『198X』問題はこうして起こった」『アニメージュ』1982年4月号、徳間書店、p123(後述の記事ページ内の囲み記事]。
この運動は同年4月3日付朝日新聞に「組合が本作の一切の製作協力拒否を会社側に通告」という形で掲載され、この記事に関心を寄せた団体「日本母親大会」が反対運動に参加[3]。5月15日には日本母親大会や東京都教職員組合、「日本子どもを守る会」など38団体が日本教育会館で集会を開いて「戦争アニメを作らせないようにしよう」というアピールを採択し、7月17日に「『198X』に反対する会」が結成されたとなっています。
アニメ雑誌『アニメージュ』は本作の完成が近づいた1982年4月号で「FUTURE WAR198X年をきみたちはどう見るか!?」という記事を掲載しています。その内容は、本作の最高責任者(製作総指揮)である東映の渡邊亮徳常務に芸能評論家の加東康一氏が質問する形での対談と、アニメ監督の勝間田具治や東映動画労組の副委員長、子ども調査研究所長の高山英男、日本母親大会事務局長の談話を並べた「私はこう思う!」と題したコメント集からなっていました。
対談の中で渡邊は「”動くゲルニカ”を作ってやろうと思った」「第三次世界大戦が起こったらどうなるのかを観客に提示することが、ほんとうの意味で平和への示唆になる」と製作理由を述べている。また、アニメでリアリティが出るのかという加藤氏の質問には「生頼範義のイラストへの起用とコンピューター・アニメ(原文ママ)でリアリティを出そうとした」と答えています。渡邊は、それらも含めた総制作費を6億円と明かし、フルオーケストラ音楽の使用やフランスの有名デザイナーへの衣装デザイン発注などもおこなったと述べています。当時の「右傾化」傾向の延長ではないか、現実の世界大戦を想定した作品を中高生という「子ども」に見せるのは危険ではないかという加藤氏の問いに対して、渡邊は戦争映画即右傾化ではない、悲劇も描いており、なぜ未来を描いて「右傾化」になるのかと答え、「絶対、好戦映画にはしてありません」と述べています。
「私はこう思う!」では勝間田氏が、自分にも戦争体験があり好戦的作品は絶対に作らないと発言する一方、組合の副委員長は作品に平和への尊厳がない、スタッフの中にも生活のために「いやいややっている」人がたくさんいると述べ、高山英男は「台本には平和の志がないが、組合側も平和を望むなら実力行使でもして止めるべき」と両者を批判するとともに作ること自体には反対ではないが、自分の子どもには見せないとコメントした。
監督の舛田利雄は、組合のボイコットを受けて作品内容をより平和を希求する方向に修正したと後年回想しており[6]、上記記事で「日本母親大会」の事務局長も自分たちが反対の声を上げたことで、シナリオの内容がどんどん変わったと述べている。
当時、『アニメージュ』にエッセイ「月づきの雑記帳」を連載していた安彦良和氏は、次の5月号でこの話題に触れ、「まじめな反戦映画になるだろうなどとは全然思わない。そういうものを目指して企画されたとも思っていない」と述べた上で、「大変月並みで通俗でマトを得ていない(原文ママ)政治認識をあたかも最もシビアな現実であるかのように錯覚して、その上に物語を築いてしまったこと」を「(本作が)犯してしまった最大の間違い」と批判した[7]。さらに、アニメのリアリズムは「ウソのかたまり」であるアニメをそれらしく見せるための手段に過ぎず、戦争を真剣に考えるためのフィルムとしてはアニメは不適であると指摘している。また、衣装デザイナーや生頼範義のイラストの起用などを「大ゲサ趣味」と評し、「百歩譲って、現実政治を素材としてリアリズムで反戦を謳うというモチーフがありえたとしても、その作品は多分6億円などという法外な製作費は必要とはしないはずだ」と述べている。渡邊氏の「アニメでゲルニカ」発言には「偽善のニオイ」を嗅ぎつけて反感をおぼえたという。安彦はこのエッセイの最終回で、この回の内容に対する反響の多くが「あなたの言うことはわかったからそれが正しいかどうかは自分で考えてみる」という真摯なものだったことが嬉しかったと記した。(『アニメージュ』1982年12月号、p144 - 145)ウィキペディアより引用させていただいています。
【Future War 198X年・制作、公開データ】
監督:舛田利雄、勝間田具治
脚本:高田宏治
製作:横井三郎
製作総指揮:渡邊亮徳、今田智憲 (クラジットなし)
イメージ・イラスト:生頼範義
プロデューサー:吉田達
企画協力:岩野正隆
作画監督/キャラクタ・デザイン:須田正己
メカニック作画監督:新井豊
美術監督/メカニック・デザイン:辻忠直
衣装デザイン:アンドレ・クレージュ
エフェクト・ディレクター:高山秀樹
文芸・設定制作:鶴見和一
録音:波多野勲
音楽:横山菁児
指揮:熊谷弘
演奏:新日本フィルハーモニー交響楽団
主題歌作詞:山上路夫
主題歌作曲:風戸慎介
主題歌編曲:青木望
音楽:横山菁児
主題歌:ポプラ「愛ゆえに哀しく」
撮影:白井久男、寺尾三千代
編集:千蔵豊、吉川泰弘
配給:東映洋画
公開:日本の旗 1982年10月30日
上映時間:125分
製作国:日本
言語:日本語
【Future War 198X年・ストーリー】
一九八X年の近未来。アメリカは対戦略核ミサイル用の戦闘衛星の開発に成功します。この衛星は、もし核ミサイルが使用されたとしても、レーザー砲により大気圏外に撃破してしまうという新兵器です。この開発には、ゲイン博士、その妹のローラ、そして日本の若き科学者三雲などが参加していました。しかし、そのゲイン博士が、ソ連スパイによって誘拐されてしまいます。米大統領ギブスンは、やむなく博士が連れ込まれたソ連原子力潜水艦を核ミサイルで撃沈。ソ連では国防相のブガーリンが「開戦の好機」と叫び、オルロフ議長が必死にタカ派の声をおさえます。
また、この事件を機に、三雲とローラの間に愛が芽生えます。その頃、西ドイツの空軍基地にソ連の最新戦闘機が亡命のため不時着した。ソ連はこの機の秘密を守るために基地を攻撃する。NATOのリンゼイ軍司令官はギブスンに核兵器の使用許可を求めた。ギブスンは話合いで解決しようとクレムリンにホットラインを入れるが、その時、主導権はブガーリンに移っており、事態は最悪な方向にむかいます。そして、戦闘で恋人を失ったNATO軍兵士が核ミサイルの発射ボタンを押したのをきっかけに、世界全面核戦争へと突入していく。ソ連から何発もの核ミサイルが発射された。三雲は衛星からレーザー砲で次々とミサイルを打ち落としていった。三雲の活躍により、世界戦争の危機から、なんとかのがれることが出来たのだ。しかし、激しい砲撃のため、衛星は軌道から離れ、宇宙の彼方に飛び去っていきます。そこへ、ローラの打ち上げたロケットが近づき、三雲を救出するのだった。
【キャスト】
三雲渡:北大路欣也
ローラ・ゲイン:夏目雅子
ブラウン博士:野田圭一
バート・ゲイン博士、予告編ナレーター:柴田秀勝
小磯:田中康郎
ロイド:矢田耕司
カミングス、藤木:寺田誠
ジョー・ギブスン大統領:金内吉男
ジラード国務長官:小林修
マッコイ統合参謀本部議長:大木民夫
ノイマン:中村正
モイラ・ハケット:舛田紀子
マイケル:田中秀幸
ミラー、ゲルハルト:松田重治
パーツ:西村知道
ハンス:北川米彦
ナースチャ、日陰:間嶋里美
デンキン:田中崇
ジョーンズ:中田浩二
オルロフ書記長:雨森雅司
クツーゾフ第一副首相:宮川洋一
ブガーリン国防相:青野武
フリノフスキー、小城:宮内幸平
遠野国防軍総司令官:納谷悟朗
遠野豊:堀秀行
秋田:玄田哲章
ロジャー・ハミルトン:岸野一彦
グールド:戸谷公次
クライン:佐藤正治
スミルノフ:森功至
ストロガノフ中佐:大塚周夫
マッキーバーン:徳丸完
レナ:佐久間あい
マリーネ:鈴木富子
ナレーター、リヒター:石原良
特報ナレーション:小林清志
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