『宇宙戦艦ヤマト 完結編』は、1983年公開の劇場用アニメ映画作品。通称「完結編」「ヤマト完結編」「ファイナル・ヤマト(Final Yamato)」。ナレーションは俳優の仲代達矢さんです。宇宙戦艦ヤマトシリーズの第8作目にあたり、劇場用映画としては第4作目となります。宇宙戦艦ヤマトシリーズの最終作品として製作されました。が、2009年には続編の『宇宙戦艦ヤマト 復活篇』が製作されています。
【宇宙戦艦ヤマト 完結編・当時の制作状況】
本作が公開された1983年当時の春は、『うる星やつら オンリー・ユー』、『幻魔大戦』、『クラッシャージョウ』と長編アニメ映画の公開が重なり、掛け持ち状態の主要スタッフが多かったとされています。
本作の公開は、1981年4月放送の『宇宙戦艦ヤマトIII』最終回で1982年夏予定と告知されていたのですが、製作作業の遅れから1983年3月12日に延期され、『クラッシャージョウ』『幻魔大戦』と同日公開と決定されていましたが、音楽ダビングの予定が遅れたことから完成は18日昼過ぎとなって、19日朝からの全国110館での一斉公開が不可能になったあげく、上映プリントの輸送が遅れ、北海道、九州が全館、東北、北陸では一部で、約30館が影響を受けています。早いところでは19日中にフィルムが届いて同日中に半日遅れで上映されたが、翌20日からの公開となったところがあった。
「『ヤマト完結編』ギリギリ3月18日の完成で、19日の全国同時公開に異変!?北海道・九州など約30館が遅れて上映。」『アニメージュ』1983年5月号、p.169
【宇宙戦艦ヤマト 完結編・演出の特長】
宇宙船ヤマトの時系列による記録では、直前の作品となる『宇宙戦艦ヤマトIII』で艦長に就任した古代進は、冒頭で多数の犠牲者を出してしまったことで引責辞任し、戦闘班長に降格しています。
これに伴い、既に亡くなっているはずのヤマト初代艦長の沖田十三が「死亡は佐渡酒造の誤診だった」との理由で復活、再び艦長に就任しており、劇中でも佐渡が自らの誤診を「全国の皆さんに坊主になってお詫びせにゃならんな」と発言するシーンがあります。このことは当時、劇場公開で観賞した私も、おそらくご覧になられたかたも皆、ビックラぽん(@_@。ものである~
▲沖田艦長はヤマト自爆のため、波動砲の引鉄を引く
そして、古代がヤマトのパルスレーザー砲を「高角砲」と呼んだり、コスモタイガーⅡの塗装がそれまでの銀色から大戦後期以後の日本海軍機色(濃緑色、明灰白色)への変更、随伴して出撃した駆逐艦「冬月」を始め、太平洋戦争末期の戦艦大和最後の出撃に随伴した艦と同じ、あるいはそれに近い艦名が使用されていました。
また、ヤマトが都市衛星ウルクに着陸して戦闘する描写は、天一号作戦(沖縄決戦で大和の特攻作戦のこと)において大和が目指した自力座礁して陸上砲台となるという構想を基としているなど、大和の陸上特攻をモデルとする演出が多く見られ、ヤマトの最期であることが示されていました。
キャッチコピーは「宇宙にひろがる永遠のロマン!ファイナル・ヤマトの熱い感動を―いま、あなたに伝えたい…」。
【宇宙戦艦ヤマト完結編・制作、公開データ】
企画・原作・製作・総指揮:西崎義展
原作・設定・監修:松本零士
総監修:舛田利雄
アソシエイト・プロデューサー:山本暎一
監督:勝間田具治、西崎義展
助監督:棚橋一徳
制作進行主任:関口孝治
制作進行:栗山美秀、小坂春女
脚本:山本英明、笠原和夫、山本暎一、舛田利雄、西崎義展
チーフディレクター:白土武
音楽:宮川泰、羽田健太郎
作詞:阿久悠
原画:二宮常雄、金田伊功、高橋信也、宇田川一彦、亀垣一、羽根章悦、小泉謙三、鍋島修 他
動画チェック:石井康夫、松下清志、岡野秀彦、猿山二郎
動画:中鶴勝祥 他
総作画監督:宇田川一彦
作画監督:高橋信也、角田紘一、金田伊功
作画監督補:星川信芳、青山充、落合正宗、横山健次、八島善孝
美術監督:勝又激
美術アシスタント:金子英俊、石原あき子
美術進行:阿久津文雄 - 松富哲雄
エッフェクトディレクター:高山秀樹
キャラクターデザイナー:宇田川一彦、高橋信也
メカニックデザイン:辻忠直、出渕裕、板橋克己
撮影監督:清水政夫
撮影チーフ:菅谷信行、相磯嘉雄、片山幸男
技術進行:隅 要次郎
制作担当:佐伯雅久
記録:竹沢裕美子
録音:林昌平、宮内栄一
編集:千蔵豊 (タバック)
編集補佐:福光伸一、渡辺美知子
ネガ編集:岸真理
効果:柏原満、伊藤克己
音響制作:本田保則、富田民幸
録音スタジオ:アバコスタジオ
スキャニメイト:東洋現像所ビデオセンター
現像:東映化学
宣伝プロデューサー:徳山雅也
イベントプロデューサー:新田晶
演技事務:青二プロダクション
制作事務:柴山達雄
製作会社:ウェスト・ケープ・コーポレーション、東映動画
配給:東映洋画
配給収入:10億1000万円
公開:1983年3月19日(35mm版)、1983年11月5日(70mm版)、1985年8月10日(特別篇)
上映時間: 152分(35mm版)/ 163分(70mm版)
言語:日本語
制作国:日本
▲回遊する水惑星、アクエリアス。その軌道は、太陽系へと向かっている。
【宇宙戦艦ヤマト完結編・キャスト】
古代進:富山敬
森雪:麻上洋子
沖田十三:納谷悟朗
島大介:ささきいさお、仲村秀生
真田志郎:青野武
相原義一:野村信次
太田健二郎:安原義人
南部康雄:林一夫
佐渡酒造:永井一郎
アナライザー:緒方賢一
徳川太助:古谷徹
山崎奨:寺島幹夫
加藤四郎:神谷明
藤堂平九郎、デスラー:伊武雅刀
水谷艦長:小林修
地球防衛軍先任参謀:筈見純
ルガール:石田太郎
ルガールII世:津嘉山正種
ディンギル少年:伊倉一恵
ディンギル側幕僚A:納谷六朗
クイーン・オブ・アクエリアス:田島令子
ナレーター -:仲代達矢
【宇宙戦艦ヤマト完結編・ストーリー】
西暦2203年、銀河系中心部の宇宙で大きな異変が起きます。異次元断層から別の銀河が現れ、核恒星系付近で銀河系同士の衝突が起こり、多くの星々が消滅します。古代進は「宇宙戦艦ヤマト」の艦長として地球防衛軍の命を受け、この宇宙災害の調査と、その宙域にある友好国「ガルマン・ガミラス帝国」の本星へ調査のため、赴いていました。だが、生存者を確認出来ないまま、宇宙災害の大爆発に飲み込まれ、やむなく無差別ワープを強行、この宙域から離脱します。
そんな中、地球から3000光年離れたアンファ恒星系にて、銀河を回遊する水惑星「アクエリアス」が現れ、その第4惑星「ディンギル星」は、引力緩衝の影響を受け、水没してしまいます。偶然、ディンギルの至近距離へワープアウトしたヤマトは、アクエリアスによる大洪水に襲われ、逃げ惑うこの星の人々を目撃します。古代達は決死の救助活動を行うが、突如ヤマトを大波が襲い、1人の少年を救えただけでヤマトクルーにも多大な犠牲者を出してしまう結果となります。その後、ヤマトはディンギル帝国の艦隊と遭遇。ハイパー放射ミサイルの攻撃を受けて全乗組員が死亡あるいは仮死状態となり、戦闘不能に陥るが、墜落した惑星で運よく非常自動操縦システムが起動し、地球へ帰還します。
▲ディンギル星人の長「ルガール」
母星を失ったディンギル星人の長「ルガール」は新たな移住先として地球に狙いを定め、アクエリアスを人為的にワープさせることで母星と同じように短期間で地球を水没させ、地球人類の絶滅後に移住することを計画していたのです。ヤマトの情報からアクエリアスの存在を確認した地球人類は、接近してくるアクエリアスによる水没を避けるため地球からの一時避難を開始するが、地球人類を封じ込めるためにディンギル艦隊による攻撃によって避難船団は全滅し、迎撃のため出撃した地球艦隊までもが全滅させられてしまいます。
帰還したヤマトから奇跡的に生還した古代進は、自分の判断ミスにより多くの乗組員の命を犠牲にした責任を取るため艦長を辞任するが、ヤマトの第一艦橋で聞いた初代艦長「沖田十三」の声に、再びヤマトに乗り組む決意をします。ヤマト出撃の日、新たなヤマトの艦長が沖田十三であるという驚愕の発表がなされる。沖田はイスカンダルへの航海の途中に死亡とされたが脳死には至っておらず、地球を救うためヤマトに戻ってきたのでした。蘇った沖田艦長のもと、ヤマトは修理が不完全なまま、アクエリアスのワープ阻止のため、地球から発進するのでした。
▲アクエリアス目指して発進。
冥王星での戦いで随伴していた残存艦艇が壊滅しながらも、敵艦隊を撃破したヤマトは単身アクエリアスへ辿り着くが、ワープシステムらしきものを発見出来ずにいた。だが、そこに現れた女神クイーン・オブ・アクエリアスから、アクエリアスのワープの原因、そしてそれを引き起こすディンギル星人の正体が太古に地球から脱出した地球人の末裔であるという事実を知らされる。
出現した敵艦隊からの激しいハイパー放射ミサイルを対ハイパー放射ビーム幕で防衛、敵のニュートリノビーム砲を波動エネルギーリークで退け、敵の拠点「都市衛星ウルク」へと強行着陸したヤマトは、敵のワープシステムの破壊を試みるも、失敗に終わります。その戦闘の中で、ディンギル星からただ1人救いあげたディンギルの少年は、戦闘をやめさせようと父親であるルガール王と古代の間に入り、ディンギル王の銃弾を受け、幼い命を落としてしまいます。そして白兵戦で戦闘中の島航海長は、敵の銃弾で撃たれてしまいます。しかし、ヤマトと共に戦ってきた島は、最後の力を振り絞ってヤマトをウルクから緊急発進させます。しかし時すでに遅く、無事帰還した古代の腕の中で、親友古代と雪の二人の幸せを祈りながら、古代の友、島大介は戦士してしまいます。
ワープしたアクエリアスを追い、ヤマトは地球へと辿り着くが、もはやアクエリアスの地球への接近を阻止することは不可能でした。
誰もが最悪の事態を覚悟する中、古代はヤマトを自爆させ、アクエリアスから地球へ伸びる水柱を断ち切るという計画を考えます。沖田艦長は、古代から意見を具申されたが、「誰が波動砲の引鉄を引くのか?雪を幸せにしてやってくれと言った島の気持ちがわからんのか」と。これは自分に残された最後の仕事だと。「乗組員たちを説得することが、古代おまえの仕事だ」と古代を諭すのでした。誰もが悲しみに暮れる中、ヤマトの自沈計画のため、アクエリアスの海上にディンギル星人が建造したトリチウム採取プラントに降り立ち、準備を進めていきます。
危険な放射性物質トリチウムを艦内に取り込む作業が完了し、最後の戦いに臨むヤマトの前に、ルガールの残存艦隊が、攻撃をかけてきます。トリチウムを抱え身動きの取れなくなったヤマトを間一髪、盟友デスラー総統が、ルガールの残存艦隊を撃破します。
▲盟友デスラー総統。いつからかカッコよく現れるようになりました。
声は伊武雅刀さん、もうはまり役です。素晴らしい。
地球へ到着したヤマトは、冥王星戦での戦いで唯一生き残った駆逐艦「冬月」と合流すると、「冬月」へ乗組員を移乗させ、単艦自沈のために発進します。だが、その第一艦橋にはただ一人、沖田艦長の姿がありました。自動制御で行われるはずの計画は、偽りであり、実は万が一の失敗を防ぐため、自爆は沖田自身による手動操作で行われるものだったです。
ヤマト乗組員たちが困惑して騒ぐ中、古代進と森雪、そして真田志郎と佐渡酒造は、ヤマトと沖田艦長に向かって敬礼し、他の乗組員たちも無言の敬礼を捧げるその姿で沖田艦長の意志を知り、敬礼で沖田艦長とヤマトを見送るのでした。
地球とアクエリアスの中間点に辿りついたヤマトは、アクエリアスから伸びる巨大な水柱を自爆により遮断することに成功します。その後、行き場を失いアクエリアスと地球の間に広がった水(宇宙の海)からヤマトの艦首が起き上がり、そのまま轟音とともに宇宙の海へと沈んでゆく・・・
▲アクエリアスにもたらされた海へ消えるヤマト
★思い返すならば1974年(当時私は14歳)に初めてテレビアニメシリーズで単純に「かっこいいなあ~」と思いながら観て、それから11年後(公開時は24歳(^^))に本作を劇場で観ました。この『宇宙戦艦ヤマト』といういう作品は、いろいろと枝葉をつけてシリーズ化されたことは、ファンのかたでなくても周知のこと。ツッコミどこも多いのがこのシリーズですが、もう長年のお付き合いだから~という感覚でご覧になられた方も多いと思います。
ドラマ、キャラクター、SF背景、美術、音楽性ともに1974年の放映時に比べると格段にスケールアップしていて、今、39年前の作品と思えないほどです。本作での演出、とくにオーケストラBGMを使っての演出タイミングは、一番素晴らしい出来栄えではないかと個人的には感じています。
▲宇宙戦艦ヤマト・完結編 Final Yamato (HD) - Jap
▲二つの愛
「二つの愛」
作詞 - クニ河内 / 作曲 - 井上大輔 / 編曲 - 宮川泰 / 歌 - 桑江知子
いいシーンで使われたいい曲です。個人的にめちゃ好きな曲♪
桑江知子さんといえば「私のハートはストップモーション」で有名になった女性歌手であり、ラジオパーソナリティー。
福岡市育ちで同世代~。今でも応援しとるバイ~
▲Final Yamato Love Scene 宇宙戦艦ヤマト・完結編
「ラブ・シュープリーム 〜至上の愛〜」
作詞・作曲・歌 - 八神純子 / 編曲 - 宮川泰
↕本作の女性ファンの方ばかりでなく男性ファンも、森雪と古代進がどんなふうに結ばれていくのか?これがヤマトシリーズに寄せる期待の一つではなかったかと思いますが、このラストシーン(公開時しか使われなかった)も、一つのエンディングですね。このシーンでホッとされた方も多いのではないでしょうか。本作では、森雪のセリフ自体は極少でありましたけれど、女性の愛がアニメとはいえ、巧みに描かれていました。
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