◆◆1984年3月11日に宮崎駿監督の長編アニメーション映画『風の谷のナウシカ』が公開されています。日本テレビアニメ今回は『風の谷のナウシカ』を再度ご紹介したいと思います。
『風の谷のナウシカ』は、今から38年前の1984年に公開されたトップクラフト制作の日本のアニメーション映画です。宮崎駿監督の長編アニメーション映画としては、第2作になります。1982年に『アニメージュ』に連載していた宮崎駿氏の同名漫画(『風の谷のナウシカ』)を原作としています。原作の単行本全7巻から見ると、序盤に当たる2巻目の途中まで連載された時点での作品で、内容も2巻66ページまでを映像化したものです。映画公開後に連載を再開した漫画とは内容が異なっています。
アニメージュを発行する徳間書店と広告代理店の博報堂による製作委員会方式で映画化され、宮崎氏自身が、監督・脚本を手がけました。本作はスタジオジブリ作品ではありませんが、高畑勲・鈴木敏夫・久石譲さんら、のちのスタジオジブリ作品を支えるスタッフが顔を揃えているのも魅力の一つではないでしょうか。
本作品のキャッチコピー は「少女の愛が奇跡を呼んだ」。ここでは長編アニメーション映画『風の谷のナウシカ』を中心に紹介します。
【風の谷のナウシカ・制作、公開データ】
製作:徳間康快、近藤道生
協力製作: 原徹
企画: 山下辰巳
音楽 :久石譲
作画監督 :小松原一男
原画 :金田伊功、丹内司、なかむらたかし、庵野秀明、鍋島修、賀川愛、吉田忠勝、才田俊次、小林一幸、福田忠、小原秀一、高坂希太郎、渡部高志、池田淳子、羽根章悦、富山正治、高野登、林貴則、小田部羊一、篠原征子
遠藤正明、二木真希子、吉田正宏、大久保富彦
動画チェック: 尾沢直志、平塚英雄
動画: 佐々木よし子、高橋幸江、田口裕美子、斉藤喜代子、水谷貴代、矢野順子、渡部由加里、祝浩司、飯田馬之介、坂元大二郎、長井和久、中村美子、谷沢泰史、讃岐平、前田真宏、多田幸子、華房泰堂、近藤方子、池田和洋
動画協力: オープロダクション、スタジオぽっけ、草間アート、はしだプロ、AGU、動画工房、スタジオトト、スタジオ501、スタジオアトン、ランダム、ヤマトプロ
美術監督: 中村光毅
背景: 木下和宏、野崎俊郎、吉崎正樹、西村くに子、海老沢一男
デザインオフィスメカマン
(三浦智、青木龍夫、岡崎得江、杉山祐子、岡田和夫、下野貴美子、今村立夫、下野哲人、富樫佳子、村井弘子、千葉薫、高波美好)
スタジオビック
ハーモニィ処理:高屋法子
特殊効果:水田信子
色彩設計:保田道世
色指定:鈴木福男
仕上検査:荻原穂美
仕上:近江妙子、石井恵美子、古谷由実、菅野わか子、長嶺浩美、水間千春、山内真紀子、吉田政代、清水理智子、山室智弘
仕上協力:イージーワールドプロ、スタジオロビン、IMスタジオ、はだしプロ、新生プロ、遊民社、スタジオ2001、スタジオ雲雀、ホクサイ、ヤマトプロ、AIC、スタジオマリーン
撮影監督:白神孝始
撮影:首藤行朝、清水泰宏、杉浦守
高橋プロダクション(宮内征雄、平山昭夫、小林武男)
撮影協力:アニメフレンド、スタジオ35
音響制作:オムニバスプロモーション
音響監督:斯波重治
整音:桑原邦男
音響効果制作:E&Mプランニングセンター
音響効果:大平紀義、佐藤一俊
音楽制作:ワンダーシティ
音楽プロデューサー:三浦光紀、渡辺隆史
音楽ディレクター:荒川勝
エンジニア :マスタリングレコーディング-大川正義 アシスタントー 林雅之、すずきたけお
劇中歌: 麻衣
CD制作: 徳間ジャパンー平田久男
録音スタジオ :音楽収録 にっかつスタジオセンター、TAMCOスタジオ、C・A・Cスタジオ、一口坂スタジオ
台詞収録: 新坂スタジオ
タイトル: 高具秀雄
リスマーク:高具アトリエ
編集: 木田伴子、金子尚樹、酒井正次
演出助手: 棚沢隆、片山一良
制作担当: 酒井澄
制作デスク: 鈴木重裕
制作進行: 押切直之、神戸守、島崎奈々子
プロデューサー補佐: 奥本篤志、森江宏
宣伝プロデューサー: 徳山雅也
「風の谷のナウシカ」製作委員会: 徳間書店(小金井道宏、和田豊、小原健治、鈴木敏夫、亀山修、大塚勤)、博報堂(佐藤孝、中谷健太郎、宮崎至朗)
現像: 東映化学
企画協力: アニメージュ編集部
アニメーション制作:トップクラフト
プロデューサー: 高畑勲
チーフプロデューサー :尾形英夫
エグゼクティブプロデューサー: 東海林隆
原作・脚本・監督:宮崎駿
徳間書店「アニメージュ」連載
配給:東映
上映時間:116分
製作国:日本
言語:日本語
興行収入:14・8億円
配給収入:7億4000万円(鈴木俊夫『ジブリの仲間たち』新潮新書、2016年、p.20)
【風の谷のナウシカ・ストーリー】
かつて栄華を誇った地球の人類は、星にまで行っていたとされる高度な文明を築き上げました。しかし、今より千年前に「火の七日間」と呼ばれる最終戦争で、巨大な産業文明は崩壊、社会も荒廃し、錆とセラミック片に覆われ、全ての国が砂漠に点在するだけの世界となってしまいました。
この世界は今、「腐海」と呼ばれる「瘴気 (しょうき) (毒ガス) 」を発する巨大な菌類の森に覆われようとしていたのです。わずかに生き残った人類は、腐海が放つ猛毒とそこに棲む昆虫に似た巨大な「蟲 (むし) 」たちに脅かされ、衰退の一途をたどっていたのです。
▲ナウシカ:ナウシカは「風の谷」の族長の娘で16歳です。人間に恐れられる蟲(むし)と対話できる特殊な能力の持ち主です。誰に対しても愛情深く、温厚、自分の信念に従い行動できる女の子です。
辺境にある「風の谷」は、海から吹く風によって森の毒から守られ、民はひそかに農耕生活を営み生活していたのです。ある日、族長ジルの娘であるナウシカは、飛行具メーヴェに乗り、腐海の森を散策していたところ、蟲封じ (鏑弾 (かぶらだま) (音を出す銃弾) ) の銃声をききます。誰かが蟲に襲われていると察したナウシカは、その人が腐海の奥に逃げようとしているのを、遠くの腐海の入り口付近の木の上から見て、狼煙弾 (のろしだま・煙を出す銃弾) で合図を送り、逃げ道を教え、腐海の外に出ても蟲が人の後を追うのを止めなかった為、光弾 (ひかりだま・丸い閃光弾) と蟲笛 (むしぶえ) を使って「王蟲 (オーム) 」の怒りを鎮め、1人の男を救うのでした。その男は、腐海の謎を解くため旅を続けていたナウシカの師、ユパ・ミラルダでした。
ユパは、ナウシカが風の谷の民や城で働く城オジたちから深く敬愛され、人々から恐れられている腐海の蟲とも心を通わせる優しい少女に成長していた事に驚きながらも、互いの久々の再会を喜びます。風の谷に帰還したユパとナウシカはその夜、大ババから「その者、青き衣をまといて金色(こんじき)の野に降り立つべし。失われし大地との絆を結びついに人々を青き清浄の地に導かん。」という、風の谷の古い言い伝えを聞くのでした。
▲ユパ・ミラルダ。ユパは族長ジルの友人で45歳、最高の剣士と称される強者です。ナウシカの師でもあるユパは、実は争い事は嫌いで温和な性格。また、歴史や文化に関する幅広い知識を持っており、腐海の調査をするために旅をしています。
夜明け近くの嵐の頃、突如轟音と共に大国トルメキアの大型船 が城の真上に出現します。大型船は蟲に襲われて制御を失い、不時着を試みるも崖に突っ込み風の谷に墜落します。ナウシカは燃える大型船からペジテ市の王女ラステルと名乗る少女を救い出しますが、少女は「積荷を燃やして」と言い残し息絶えてしまいます。大型船の積荷には、千年前に世界を焼き尽くしたという巨大人型兵器「巨神兵」の胚が積まれていたのです。
朝になって、トルメキア軍司令官である皇女クシャナは、巨神兵で腐海を焼き払おうと、大型船を回収するため、風の谷へ侵攻します。その中で、ナウシカの父親の病床のジルを銃殺し、怒りに我を忘れたナウシカと部下たちの間で乱闘騒ぎが起きます。ユパの介入で騒ぎはしずまったものの、相手に逆らう余地はなく、本国へ運ぶつもりだった巨神兵の輸送は諦め、未完成の巨神兵を風の谷で完成させる方針に固まったことで、谷はクシャナの支配下に置かれる事になってしまいます。
▲クシャナ。映画版ではトルメキアの将軍で、原作版ではトルメキアのヴ王の王女であるとともに、先代王の直系の孫です。
翌朝捕虜となったナウシカは、トルメキアの大型輸送機・バカガラスでぺジテ市へ護送される途中、突然現れた戦闘機・ガンシップの攻撃により大きな損害を受けてしまいます。輸送機や護衛のコルベットが応戦しますが、次々と撃墜されていき、コルベットがガンシップを撃墜するものの、ナウシカらが乗る輸送機も被弾し落下します。ナウシカは輸送機に積まれていた風の谷のガンシップでクシャナと共に脱出し、腐海に不時着します。ナウシカは王蟲から、無言の内にガンシップのパイロットの少年が生きて腐海をさ迷っている事を知らされ、蟲の群れを追って少年を救出する為、ワイヤーが切れ同じく腐海に不時着した風の谷の貨物グライダー・バージで、人質として同行していた城オジたちに「1時間後に戻らなければ谷に帰れ」と言い残し、単身メーヴェでその場を離れます。ナウシカは墜落後に地蟲[ (じむし) と翅蟲 (はむし) から逃げ回っていた少年を救い出すが、後ろから翅蟲の体当たりを受けメーヴェの体勢を崩し地面に墜落、彼女は気を失ってしまいます。そして少年と共に流砂に飲み込まれ、腐海の底に落ちる。過去に幼い彼女が王蟲の幼い幼生と遊んでいたが、彼女の前で大人たちがその幼生を捕まえてしまった夢を見る。
夢から覚めたナウシカは、腐海の底に広がる清浄な空間の水と砂が、城の地下で父や谷の人の病気の治療法を探す為に、自分が腐海植物を育てるのに使っていた、井戸水及び井戸の底の砂と同じである事から、腐海が毒素に満ちた大地を浄化する為に存在しているという確信を抱くのでした。そして先程助けた少年―ぺジテのアスベルと再会し、彼が大型船の墜落事故で死去した少女ラステルの双子の兄だった事を知ります。
▲アスベルはぺジテ市の王子で16歳です。ラステルという双子の妹がいます。大国トルメキアにぺジテを滅ぼされたことで恨みを抱いており、トルメキアの将軍・クシャナの艦隊に奇襲をかけました。ナウシカとは腐海に関する意見の違いもありましたが、ナウシカと共に行動することになります。
翌朝、一路アスベルの故郷であるぺジテ市へ向かった2人でしたが、町は大量の蟲の死骸に覆われ破壊され尽くしていました。トルメキア軍と蟲の激戦の跡や、アスベルが以前から聞いていたトルメキアを追い払う計画から2人は、ぺジテ市に残留していたトルメキア軍を打倒する為、ぺジテ市民が蟲を利用して町ごと襲わせていた事を知るのでした。愕然とし憤るアスベルを他所に、トルメキアに奪われた巨神兵の胚が風の谷に有る事を突き止めたペジテ市長は、報復として王蟲の群れを誘導して風の谷を襲わせ、トルメキア軍を全滅させ、巨神兵を奪う計画を立てていたのです。ナウシカはその非道な作戦に憤り、計画を中止するよう訴える。しかし訴えは聞き入れられず、谷へ知らせに戻ろうとしたナウシカは、ぺジテ市民が乗る貨物飛行艇・ブリッグに監禁されてしまいます。
その頃、風の谷では、トルメキアの船と共に谷に運び込まれた胞子を全て焼却したはずでしたが、一部が残留し貯水池の周囲の森の木に付着、瘴気を吐き始めるという一大事が起きていたのです。谷を守る為に、森を焼き払わざるを得なくなった事で、谷の民の怒りが頂点に達し、暴動が発生します。住民たちは、谷と酸の湖の間の砂漠の中にある宇宙船の残骸の中に立てこもり、ナウシカを待つのでした。
ナウシカは、ブリッグに乗船していたラステルの母の計らいと協力により、ぺジテ市の少女と身代わりで入れ替わる事で監禁部屋を脱出します。しかし、そこにコルベットが急襲し、たちまちブリッグの船内は制圧されていきます。船からの脱出をためらうナウシカでしたが、アスベルによってメーヴェごと空中へ押し出され、迷いを振り切るように谷へと向かいます。それに気づいたコルベットが、ブリッグから離脱して襲い掛かるが、城オジのミトとユパが乗るガンシップが駆けつけ、コルベットを粉砕するのでした。そして、ブリッグに飛び移ったユパによってブリッグ内部の争乱は鎮圧されます。
ミトと一緒にガンシップに乗り、全速力で谷に駆けつけんとするナウシカ。その頃、初めて風が止み、不気味なまでの静けさと共に膠着状態が続いていた風の谷。ナウシカたちは怒り狂って谷へと進撃する王蟲の群れと、王蟲を谷へ導く為に王蟲の幼生を吊り下げて飛ぶペジテ市の飛行ガメ (小型浮揚装置) を発見します。非道なやり口に憤り、ナウシカは穏便に事態を収束する為、王蟲の幼生を群れに帰す事を試みるべく、一人メーヴェに乗り移って飛行ガメへと接近します。
風の谷ではガンシップが降り立ち、ミトから王蟲の襲来が知らされる。ナウシカは飛行ガメのパイロットたちに話を聞くよう説得するが、彼女を敵と思いこみ、彼らは執拗な銃撃を繰り返すばかりだった。ナウシカはメーヴェの上に仁王立ちになり、身を捨てて飛行ガメに飛び込み、酸の湖の中州へ墜落させる。怯える王蟲の幼生に寄り添いながら王蟲の群れを待つナウシカだったが、トルメキア兵の攻撃により、怒りに我を忘れた王蟲たちは動きを止めず谷へと突き進みます。ナウシカは自分や幼生と同じく中州に落ちた飛行ガメのパイロットを銃で脅し、自分と幼生を群れの先に運んで降ろすよう命じます。
程なくして王蟲の群れが谷に近づき、刻一刻と破滅の時が近づいて来る。クシャナは不完全な状態で巨神兵を無理やり孵化させ、圧倒的な威力の光線によって王蟲たちを全滅させようと試みます。しかし巨神兵の肉体は攻撃の反動に耐え切れる状態ではなく、2発の光線を放つとどろどろに腐り落ちてしまいました。
絶望の最中、王蟲の幼生とナウシカを吊り下げた飛行ガメが王蟲の群れの正面に現れ、2人を降ろして去っていきます。静かなまなざしで群れを見つめるナウシカは、幼生もろとも群れの突進を受けて弾き飛ばされてしまう。谷の民が入っている廃船にトルメキア兵が避難した後、その船が王蟲たちの突進によって崩壊し始めた時、王蟲の目の攻撃色が消えていき、動きが止まります。身をもって谷を守ったナウシカの姿に人々が泣き崩れます。
▲大ババは腐海の辺境一帯で一番の高齢で、100歳以上だということです。映画版では目が見えない設定です。深い知識を持つ最高齢者ということで、人々の尊敬を集めています。「風の谷」に伝わる「青き衣の者」や「大海嘯」などの伝説の語り部です。
しかし人々は、奇跡のような光景を目にするのでした。地に倒れて死んだナウシカを囲うように集った王蟲たちは、触手を伸ばして彼女を支え、宙に持ち上げていきます。朝日が昇り、風が吹き始める中、ナウシカは蘇り目を覚まし、驚き辺りを見回し、下を見て幼生の無事を確認、彼女は王蟲に感謝し、彼女に感謝する王蟲たちの金の触手に支えられながら歩き出す。さながらその姿は、青き衣の者の伝説を体現したかのようであった。その後、無人のメーヴェが空を飛び、風が吹いている事に人々は気づきました。
エンディングで、谷に群れ集った王蟲たちは森へ帰っていった。クシャナはナウシカと和解して風の谷から去り、人々は焼き払われた森を取り戻す為の植林に精を出し、アスベルはユパと共に旅にでます。腐海の底に落ちたナウシカのヘルメットの脇で、こぼれ落ちたチコの実の木の芽が芽吹いていたのです・・・
★『風の谷のナウシカ』は興行的には大ヒットとはいえないのですが、1984年度のアニメグランプリ、日本アニメ大賞の作品部門をダブル受賞しています。また、映画雑誌ではベストテンに選出され、新聞のコラムでは「女性原理の主張」や「自然との共生」という視点を賞賛されるなど、アニメの枠を越える評価を受けました。
宮崎駿氏は、常々「自然との共生」を謳われていますが、当時はエコロジーブームということもあってか、本作も次第に幅広い支持層を受けていくことになりました。国内外で複数の映画賞を受賞し、アニメーション作家としての宮崎駿氏の知名度を引き上げる作品となりました。
本作は、TSUTAYA DISCASでの視聴が可能です。
▲Nausicaä of the Valley of the Wind - (Lalala) Song Ending
▲風の谷のナウシカ / Nausicaa of the Valley of the Wind - 久石 譲
