◆日本のテレビアニメ昭和徒然史(最終回)となる今回は、1988年(昭和63年)下期(7月~12月放送開始分)PARTⅡをご紹介します。
【ハーイあっこです】
『ハーイあっこです』は、みつはしちかこさんによる漫画作品。および、それを原作としたアニメ作品です。 朝日新聞日曜版に1980年7月6日より長期連載され、主人公家族の成長の有様が描かれていたが、2002年3月31日、同新聞の日曜版が廃止されることになり、連載が終了しました。また、1984年・1985年にはフジテレビ「月曜ドラマランド」にて、三田寛子・三田村邦彦主演で実写ドラマも放送されています。また1986年にも同枠にて、森尾由美・渡辺裕之主演でドラマ化されました。ここでは、テレビアニメを紹介します。
朝日放送(ABC)制作・テレビ朝日系で、全163話が放送された。朝日放送制作の単一タイトル作品としては最も長期にわたって放送されていたアニメである(シリーズも含めれば『おジャ魔女どれみ』シリーズの方が長いです)。
メインスポンサーは日本ガス協会(一部で第一家電の地域もあった)で、日本ガス協会とコラボレーションしたCMも一部地域で放送されました。また一時期、公共広告機構(現:ACジャパン)のCMが挿入されたこともあった。
VHS・DVD・Blu-ray等といった映像ソフト化はされていません。
【ハーイあっこです・内容、登場人物、キャスト】
明るく元気な主婦あっことその夫ジュンイチ、同居するジュンイチの母セツコといった面々が繰り広げるユーモラスな日常生活を描くホームドラマです。
(坂本家)
あつこ:小宮和枝
主人公。旧姓は「大里(おおさと)」。愛称は「あっこ」。小柄な体型で少しドジですが、明るく元気な性格で誰とでもすぐ仲良くなれます。学生時代の憧れの人だったジュンイチさんと結婚しました。
セツコ: 瀬能礼子
ジュンイチの母。和服を着こなし、漬物を漬けるのがとても上手で、俳句が趣味という家庭的な上品な4女性。基本的に優しい性格だが、上品な印象とは裏腹にお茶目な面があり、息子夫婦にちょっとしたイタズラを仕掛けて騒動になりかけた事もあります(アニメ版11話)。あっこに対抗して試食販売のパートをした事があるが、専業主婦生活が長い為か、パートというか働くことが苦手。夫(ジュンイチの父)とは死別しています。
ジュンイチ:塩沢兼人
セツコの息子で会社員です。学生時代の同級生だったあっこと結婚します。あっこからは「ジュンちゃん」と呼ばれています。優しい性格で、長身でハンサムな事から学生時代から女性に人気があります。
タロー:坂本千夏
あっことジュンイチの息子(第1子)。小さいときは洟垂れ坊主でした。
ハナコ:こおろぎさとみ
あっことジュンイチの長女(第2子)。愛称は「ハーちゃん」。生まれたときはお人形のように可愛かった。非常にやんちゃでわんぱく。「アンパンマン」のドキンちゃんのぬいぐるみがお気に入りです。
(大里家)
ユキエ:巴菁子
あっこの母です。細かい事は気にしない元気な肝っ玉母さんタイプでセツコとは正反対な性格のため、セツコとは相性がよくないようです(仲が悪いわけではない)。夫との結婚は親族の反対を受けたらしく、結婚式をしなかった為、花嫁衣裳姿の写真がありません。
太一:北村弘一
あっこの父。会社員です。ユキエとは対照的な性格で、無口、愛想がありません。趣味は盆栽です。
政子:岡のり子
山下夫人:伊倉一恵
ヒナコ: 南杏子
ヨシコ:天野由梨
アキラ:亀井芳子
ノリコ:水城蘭子
【ハーイあっこです・制作、放送データ】
制作:村田英憲
原作:みつはしちかこ
企画:渡邊米彦、鷺巣政安、霜田正信
監督:角田利隆
絵コンテ/演出:角田利隆、堀越新太郎、南波千浪、細谷秋夫、山崎友正、奥田誠治、鈴木敏明、五月女有作、西浦哲、木暮輝夫、大町繁、今成英司、伊東政雄、吉田浩、他
シリーズ構成:山本優
脚本:山本優、朝倉千筆、荒島晃宏、照沼まりえ、角田利隆、三宅直子、一色弘安、西尾八千代、藤本さとし、古賀泰隆、他
作画総監督:小林勝利
キャラクターデザイン:長濱裕子
作画監督:小林勝利、鈴木英二、金子勲、中山和子、増谷三郎、福山映二、丸山政次、石之博和、福岡鷹志、越崎鉄也、他
撮影監督:飯塚進
色彩監督:鬼沢冨士男
美術監督:遠藤守俊、金村勝義
音楽:小坂明子
音響監督:加藤敏
効果:倉橋静男
調整:熊倉亨
選曲:東上別府精
録音制作:東北新社
現像:IMAGICA
制作担当:一色弘安
制作デスク:平松巨規(サンシャインコーポレーション・オブ・ジャパン)
制作コーディネーター:小野辰雄
プロデューサー:鍋島進二(ABC)、渡邊米彦
制作協力:サンシャインコーポレーション・オブ・ジャパン、じゃっく、スタジオじゃっく
アニメーション制作:エイケン
製作:ABC、エイケン
放送期間: 1988年10月12日~1992年3月26日 全163回
放送局:朝日放送・テレビ朝日系列
オープニングテーマ
▲小坂明子 晴れのち晴れ
♬『晴れのち晴れ』(前期OP)
作詞・作曲・歌 - 小坂明子 / 編曲 - 松井忠重
▲小坂明子 キッチンから愛をこめて
♬『キッチンから愛をこめて』(後期OP)
作詞 - 森雪之丞 / 作曲・歌 - 小坂明子 / 編曲 - 松下一也
【美味しんぼ】
『美味しんぼ』(おいしんぼ)は、雁屋哲さん(原作)、花咲アキラさん(作画)による日本の漫画作品、アニメ、テレビドラマ、映画化もされました。『ビッグコミックスピリッツ』(小学館)にて、1983年20号より連載されていました。1987年、第32回小学館漫画賞青年一般部門受賞。2020年10月の時点で累計発行部数は1億3500万部を突破しています。( “大人気アニメ『美味しんぼ』公式YouTubeチャンネル開設 全121エピソードが期間限定で無料配信決定!原作者・雁屋哲氏がコメント”)
【美味しんぼ・作品概要】
東西新聞文化部社員、山岡士郎と栗田ゆう子を主人公とし、「究極のメニュー」作りを通して様々な人々が抱える悩みを、食を通じて解決させるストーリーです。それまでの料理漫画には見られなかったリアリティあふれる描写が人気があり、テレビアニメ、テレビドラマ、映画など様々なメディア展開が行われ、グルメ漫画や日本のグルメブームの活性化に寄与したといわれています。
作中では料理に加えて食材や食品添加物、食文化などを扱い雁屋の独自論を主張しています。回を追うにつれて批評対象が食と無関係の事象にも及ぶようになったり、雁屋さんの事実誤認や偏見、科学的立証に基づかない批判もあり、読者や批判対象となった企業・団体などから本作に抗議が寄せられることがありました。
作中では実在する人物や現実にあった出来事、実際の発表データなどが多く使われているのに反して、祖母が鶏肉を食べただけで同居している家族(ゆう子の兄)の事すら誰かわからない程の認知症が治ったり、トコブシの炊き込みご飯(通称「海のマツタケご飯」)を食べただけで重度の記憶障害が治る、チゲを食べただけで二日酔いが治る(そのような科学的根拠はない)、豚肉を食べただけで末期の癌が治癒(これについては山岡が「ガンが消えた!!」と驚愕するなど、作中でもあり得ない事例として描かれている)、超能力によって時空を移動し昆布と鰹節の製造工程を見学するなど、漫画ならではの非現実的な描写もあります。
取材のためとして2000年頃からは1年のうち大半を長期休載し、東日本大震災など一つの主題を連続で描くときもたびたび途中休載し、休載せずに完結することは少ない。ビッグコミックスが刊行する単行本は2003年に累計1億冊を売り上げ、文庫版、愛蔵版、テーマ毎に再編集した総集編、のほかに「美味しんぼ塾」「美味しんぼの料理本」などの関連書籍も刊行されている。第1巻から第60巻までの収録分は有料でネット配信されたが、配信サイト「ライコスジャパン」が日本から撤退して終了しました。台湾では小学館から正式認可を受け東立出版社が、『美味大挑戦』を繁体字中国語版で刊行しています。
連載と長期休載が不定期に反復される状態を雁屋や関係者らが話し合い、『ビッグコミックスピリッツ』2008年24号で連載開始から25年間続いた山岡士郎と海原雄山父子の確執を和解させ、ストーリーに区切りを付けて2009年13号から連載を再開したが、2014年5月19日25号以降、休載状態にありましたが、2016年3月22日に原作者、雁屋哲さんがブログを更新し、30年超続いた連載を終了させる意向を表明した。美味しんぼは直近の「福島の真実編」で福島第一原発構内など福島県内を取材した主人公が鼻血を出し、それを被ばくの影響だとする描写が批判され、福島の描き方を巡る議論となっていました。
タイトルの『美味しんぼ』は雁屋さんの造語で、フランス語の「グルマン」に近い意味です。「食べ物を題材にした漫画を描いて欲しい。」と依頼され、作品名を決めることが面倒で担当編集者に依頼したが、提案された「味で勝負」「味キング」「味一番」などが気に入らず、結局、雁屋さん自身がつくりました。
【美味しんぼ・制作、放送データ】
企画:務台猛雄(日本テレビ)
監督:竹内啓雄
キャラクターデザイン:河南正昭
小道具設定:佐藤正浩
美術監督:古谷彰
撮影監督:斎藤秋男、刑部徹(特別編1)、谷口久美子(特別編2)
録音監督:浦上靖夫
編集: 岡安肇、小島俊彦、中葉由美子、村井秀明、川崎晃洋
文芸:小松崎康弘➡東山謙一➡水島努➡金井浩
音楽:大谷和夫
制作担当/アシスタントプロデューサー:伊藤響(日本テレビ)、田中敦(シンエイ動画)
プロデューサー:武井英彦(日本テレビ)、加藤良雄(シンエイ動画)
アニメーション協力:スタジオディーン
製作協力:遊カンパニー
企画制作:日本テレビ
製作:シンエイ動画
放送期間:1988年10月17日~1992年3月17日 全136話
放送局:日本テレビ系列
【美味しんぼ(テレビアニメ)登場人物、キャスト】
本作『美味しんぼ』の特徴として、きらぼしの如く、登場人物が多いことです。ここでは、テレビアニメで比較的登場回数の多い人物の紹介を原作での展開も含め、紹介しています。
★山岡 士郎:井上和彦
本作の主人公。初登場時27歳。東西新聞社文化部記者。美食倶楽部を主宰する世界的陶芸家海原雄山の一人息子でもあります。父子関係の決裂で実家を飛び出してから、母親の姓を名乗り続けています。一見グータラな男ですが、食への造詣が深く、「究極のメニュー」づくりを任されます。料理勝負で海原雄山以外の人間に負けたことがありません。原作では共に「究極のメニュー」を担当する栗田ゆう子と結婚します。
中川ら美食倶楽部の男性陣を呼び捨てにしているが、チヨを除く女性陣のことは「さん」付けで呼んでいます。劇中で最初は敵方であった人物たち(板山社長など)を味方につけています。大学は浪人して入学しています。料理の腕も板前なみであり、調理に関係する科学的な知識や食用とされる生物にも詳しいだけでなく。食にかかわることを学ぶ意欲に旺盛なところがあります。料理の腕は、美食倶楽部料理長中川に徹底的に教え込まれており、実母と乳母代わりのチヨに育てられた影響もあって頭があがりません。
★山岡(栗田) ゆう子: 荘真由美
本作のヒロインとして登場。初登場時は22歳。東西新聞社文化部記者。新入社員として文化部に配属されますが、出勤3日目にしてその味覚を買われ、山岡士郎と共に「究極のメニュー」を担当することになります。原作では、のちに士郎と結婚します。この原作漫画の前半頃には話の進行を、アニメではナレーションを担い、彼女の視点でストーリーが進行しています。海原雄山とは紆余曲折を経て、良き理解者となり、時折相談に訪れるようになります。原作では結婚後も夫婦で東西新聞社に勤務しており、同じ姓が二人いると電話対応などで不便なため、社内および仕事上では旧姓の「栗田」を名乗り続けています。
谷村 秀夫:嶋俊介
山岡の良き理解者の一人。連載開始時から文化部長だが、金上の東西新聞乗っ取り未遂騒動の際山岡と共に大原社主のサポートに尽力し、その功績が認められ編集局次長兼文化部長に昇進します。後に局長待遇へと昇進を重ね、更に編集局長へと昇進しました。昇進後も「究極のメニュー」業務についての責任者として適任であることから、文化部長職を兼任しています。
第1話で、山岡が豆腐と水の味を完璧に判断できる能力を示したことに「やはり大したものだ」と感想を述べていることから、山岡と海原雄山との関係を知っていた人物であるようにも見えるのですが、アニメではその様な描写はされていません。社内において山岡に圧力をかけず、公私混同の業務命令という名の無茶振りをしない唯一の上司ではあるが、大原や小泉、さらには他部署の部長や局長と衝突した山岡が「辞めてやる!」と喚くのを宥めたりして気苦労が絶えません。
仕事に対して有能で、大原社主に対してですら正論をぶつけて筋を通そうとします。冷静沈着かつ温和で器が大きい故、上司や部下の厚い信頼を集めている。第30巻究極対至高「鮭勝負!!」で山岡と栗田の仲違いから負けた際には、山岡と栗田の関係を修復するために厳しい言葉を掛けたこともあります。アニメにおいては感情的になったり、山岡の無礼な態度に声を荒らげたりする場面も少なからず見受けられます。
富井 清一:加藤治
東西新聞社文化部副部長。文化部のムードメーカー。眼鏡を掛け、前頭部が禿げたクセ毛の髪、毛穴の黒ずんだ鼻、ビーバーのような出っ歯の二枚前歯が特徴です。水玉模様のネクタイを着用している。上司にゴマをすって部下をいびるのが生き甲斐で、かつ明るく落ち着きの無いおっちょこちょいな性格です。窮地に陥ったり感情が高ぶるとすぐに泣きます。
当初は嫌味系の「中間管理職」キャラだったが、次第に「部下(主に山岡)に助けられるが懲りないダメ上司」的キャラになっていき、更には、酒乱・舌禍で東西新聞社すら危機に追い込む典型的な「無能上司」に堕ちていった。管理職としての信頼は上司と部下どちらからも高くなく、「究極のメニュー」の製作開始後は主に社主から山岡・ゆう子に対する「呼び出し係」として扱われています。味音痴な面があり、味の判定をする場面で他の者が苦言を呈しても「うまい」と評価することがある。また、何かと逆らう山岡に対して、飛び蹴りしたり頭から噛み付くのがパターン化している。極度に緊張した時に限り煙草も吸うことがある。また、頭の禿げを気にしている。
子供の頃に父親が事業に失敗したため貧しい生活を送り、その後は土木建築の現場で働きながら夜間大学を卒業し、東西新聞社に就職した苦労人。時々その時の苦労話を誇らし気に話したりする。家族に対する情愛は基本的に深く、弟が自殺未遂をした時は真っ青になりすぐ駆けつけ「この大馬鹿者!」と怒りをあらわにしました。
部長職(どの部かは不明)や部長待遇の文化部副部長に昇進しかけた事がありますが、結局ふいになるなど、部長への出世の障害にもなっている酒癖の悪さが原因で、何度も解雇の危機に瀕しては山岡達に助けられています。また軽口をたたいて禍の元を振りまくことが多く、序盤から不用意に放った言葉が相手の機嫌を損ねて大騒動を起こしたり、はては国際問題に発展させかけたエピソードもあります。
荒川 絹江:水原リン
▲文化部記者(左が荒川さん、右が三谷さん)
東西新聞社文化部記者。旧姓:田畑。苗字はアニメが原作同様「たばた」なのに対し、ドラマでは「たばたけ」となっていた。山岡と栗田ゆう子の先輩。当初はオールドミスという設定で、容姿のみならず性格も地味であった。眼鏡を着用している。栗田ゆう子と花村(三谷)典子とはよく行動をともにし「文化部花の3人組」と呼ばれている。実は格闘技好きで、鈍感でグータラな山岡に対してたびたび手がでます。
団一郎がゆう子に好意を持つことを知ると二人を結婚させようとしたが、山岡が、ゆう子が団と一緒の車で出かけたのを目撃して「お泊まり」の旅行に行ったと思って(実際は行き先が一緒なので送ってもらっただけ)魂が抜けたように落ち込んだ時には三谷夫人と共に「私たちも最初は栗田さんの相手にあの男(山岡)を考えていたんだし、急にあの男がかわいそうになってきた」と漏らし、ゆう子が出社して、実際は何もなかったのを知るとホッとしたりガッカリしたり複雑な心境を見せている。山岡とゆう子の結婚後は小姑として結婚生活を見守る。
対外的には強気な性格で、暴力団相手にも物怖じせず行動する。他方、自分のこととなると小心者で、精作の母を食事に誘う際は平常心が保てないとしてゆう子と典子を誘うが、山岡には「心臓に毛の生えたオールドミスにしては弱気なことで」と言われ、昼寝していた山岡の顔に書類を乗せている。
夫は写真家・荒川 精作。彼が文化部に働く人の姿を撮りに来ていた時、絹江に一目惚れして、自身の写真展に誘います。山岡の手助けもあって交際がスタート、その後結婚した。その披露宴は究極・至高の「結婚披露宴メニュー」対決の舞台にもなりました。
三谷 典子:佐久間レイ
東西新聞社文化部記者。旧姓花村。山岡と栗田ゆう子の先輩。美人でいつも元気。ゆう子、絹江と共に文化部花の三人組と呼ばれているが、結婚前は特に彼女だけ「文化部の花」と呼ばれていた。山岡のグータラさ、鈍感さに対しては、絹江以上に辛らつ。絹江と共に団とゆう子の結婚を望んでいたが、山岡とゆう子の結婚後は小姑として結婚生活を見守る。
夫は煎餅屋「三谷屋」主人・三谷直吉。典子が友人と菅平高原へスキーに行った帰り道、乗っていた車が雪にはまり立ち往生し、そこに偶然通りかかった直吉が助けるも、その時お互い一目惚れをしていたにもかかわらず名前を聞かずに別れてしまった。しかし腹の足しにと渡された煎餅だけを頼りに典子は彼を探し始め、山岡の協力もあってついに「三谷屋」を探し当て、直吉と再会。順調に交際し、結婚します。
大原 大蔵:阪脩
東西新聞社代表取締役社主。初登場1巻第1話。72歳。「究極のメニュー」発案者、世界新聞協会会長、大相撲「島高部屋」の後援会役員。常に和服姿。
連載初期は、究極のメニューのためなら自ら全面的に山岡達をサポートし、重厚なイメージで滅多な事でも怒らない人間的にも器の大きな人物として描かれています。しかし、海原雄山が人格者としてのキャラクターに変貌をとげていくとバッティングを避けてか、第8巻「飲茶」あたりからコミカルな面を多々見せるようになります。
かなりの頑固者で気性が激しく、興奮して自分の机をバンバン叩いたり、激高して倒れることもしばしば。また、食べ物のことになると子供のように我を通す。年の割にかなり腕っぷしが強く、何かと自分に逆らう山岡を腕一本で殴り倒したり締め上げたりしている。
美食倶楽部の元会員。海原雄山に「究極のメニュー」への協力を依頼したり、山岡士郎との和解を求めたが、結局雄山により会員から除名されることになりました。以後「究極のメニュー」と帝都新聞社の「至高のメニュー」との対決が始まると、士郎と雄山の対立に比例して関係はさらに悪化、雄山が二木頭取に対し「お嬢さんが東西新聞で働いているのは情けない」と言うほどになってしまいます。しかし、その後士郎と雄山の対立が和らいでいくに従って徐々に氷解、美食倶楽部の会員に復帰こそしていないが雄山とは一応和解した形となっています。
★海原 雄山:大塚周夫(テレビアニメ)
山岡士郎の父であり、陶芸を中心に書道・絵画・文筆にも秀でた大芸術家です。芸術のためなら妥協を許さない厳しく激しい性格でもあります。息子である山岡士郎との確執が、全編を貫くストーリーとなっており、存在感が非常に大きいキャラクターです。「食」もまた芸術と考える希代の美食家、それが嵩じて会員制料亭「美食倶楽部」を主宰しています。初登場は1巻「油の音」。モデルは同じく美食家で、一頃「星ヶ岡茶寮」という料亭を経営していた北大路魯山人。作中、雄山の師である人間国宝の唐山陶人が北大路魯山人の弟子という設定になっています。雄山は魯山人を「生涯をかけて乗り越える」ことを目標としています。
外見は、白髪の混じった総髪。登場当初は杖を使用していました。服装はほとんど和服に中羽織。都内での移動はお抱え運転手付きのロールスロイスで。しかしすぐに杖を使わなくなり、移動も中川を伴って徒歩になることが多くなりました。雅号めいた名前ですが、陶人に師事する前の美術大学生時代からそう名乗っています。本名かは不明。美術大学を日本画と書の勉学のために7年かけて卒業。山岡とし子とは大学入学後に逗留先の福島県の霊山神社で知り合った。のちに唐山陶人から独立して「雄山窯」を建てる際に結婚している(第111巻「福島の真実」)。
とし子との間にできた息子が士郎で、雄山は早くから息子の味覚に対する鋭い感性を感じ取り、士郎が中学生になった頃から調理場に入れ、料理の基本を徹底的に教え込んでいます(1巻「ダシの秘密」、101巻「親の味・子の心」参照)。幼少時の士郎に豊かな感性を養ってもらいたいと、自ら士郎のために食器を作ったり、食材の美味しさを引き出した料理を作って偏食を治したりするなど、父親として優しい一面もあったが、厳しい面のほうが強く、何よりも士郎の母親に対する妥協を許さぬ態度が「芸術や美食のためなら周囲を不幸にすることも厭わない人間」として、士郎の反感を買うことになってしまいます。
なお、実際には心臓の弱い妻を気遣って出産には反対していたが、雄山の後継者が必要だとして押し切られました。また、当初は余命幾ばくもなかった妻が長命を全うできたのは、ひとえに雄山に対する献身が彼女を支えていたからと主治医から告げられています。母親の死をきっかけに息子とは訣別。士郎は家にある雄山のすべての作品を壊して出奔、雄山は士郎を勘当し、絶縁状態となりました。(海原雄山と妻としことの夫婦関係についてはテレビアニメでは描写されていません)本編でのふたりの関係は、雄山が東西新聞に入社していた士郎を見つけるところから始まっています。
登場当初は、士郎が言うとおりの極めて冷酷・尊大な人物として描かれており、吸い物が気に入らないと椀を投げたり、お膳をひっくり返したりする他、公衆の面前で士郎ら東西新聞の面々を「食い物の味も分からぬ豚や猿」呼ばわりしたり、士郎へのあてこすりとして大原社主を美食倶楽部から追放する、レストランの開店パーティーにわさび醤油を持ち込んでフランス料理を貶めたりするなど傍若無人なキャラクターだったが、士郎に煮え湯を飲まされることも少なくなかった。
しかし、5巻「もてなしの心」で「心」こそ最も大事なものと言い出してからは「気難しいが筋の通った人格者」として描かれるようになり、二人の関係をよく知っている者たちからも、士郎も父親譲りの頑固な性格で、和解が成り難かったと語られるようになった。士郎とゆう子が結婚してからは、士郎を鍛え見守る父親としての一面も見せ始め、孫に対しては頭によじ登られても苦笑いし、誕生祝いとして自作の茶碗を贈り、3人の孫たちには塗りの弁当箱を贈っています。これらの路線変更については、のちに士郎が雄山の振る舞いについて誤解していたとの説明がなされたが、周囲の人物には士郎のほうがわがままだったという印象を与え、ゆう子に至っては「雄山の育て方に原因があった」という線こそ否定してないものの、士郎については「何でも親に反抗ばかりしている」と皮肉られます。
ゆう子が父子関係の修復に動きだすようになってからは、何かと彼女に一本取られることが多くなっていきます。雄山も口ではいろいろ言うものの、そう言うゆう子を悪く思っておらず、こころの中ではゆう子を認めている。こうした描写部分に海原雄山のふところの深さが描写されています。しかし、これまでに「おまえ」や「栗田ゆう子」としか呼んだことがない。東西新聞の「究極のメニュー」に対する帝都新聞の「至高のメニュー」のアドバイザーを引き受け、究極側を何度も敗北させている。雄山は、士郎が自分に対してどういう感情を持っているかは、彼と再び相まみえてからの数々の態度から理解したと思われる。63巻「東西新聞の危機」では「あの男(=士郎)は私が私の妻(=士郎の母)をいじめ殺したと言う」「あの男…私を憎んでいる。終生、私を許さないそうだ」と語っている。原作102巻「究極と至高の行方」にて、雄山の方から手を差し伸べる形でついに士郎と和解したが、その後も対決は続き、103巻「日本全県味巡り和歌山編」では士郎に関して「『虫けら同然』から『少し対等』に扱うだけ」と言っていました。しかし、福島県の現状を共に取材し、雄山自身の過去や妻とし子との出会いなどを士郎に語ることで2人は過去を乗り越え、それまで雄山を「お前」や「あんた」などと呼んでいた士郎が「父さん」と呼んだことで、父子はついに真の和解を果たすこととなる。
妻の存命中は一戸建ての和風邸宅で妻と士郎の3人で暮らしていて、他にも弟子や窯場の関係者や女中などもそばにいたが、妻の死後は美食倶楽部の離れで生活している。
政治家と付き合う事を嫌うが、角丸副総理や大橋総理などごく一部の政治家とは交流があります。それ故政界には顔が利くらしく、雄山を襲った「元気亭」の店主を留置所から釈放させたことがあります。また、13巻「激闘鯨合戦」では角丸副総理にロビー活動を行っています。
76巻「雄山の危機」で交通事故に遭い、一時昏睡状態に陥るが、士郎が僅かに「おやじ…」と呼ぶ声で恢復に至った。
「雄山の料理好きと帝王のような味覚は天性のもの」と言われています。芸術家・美食家としてだけでなく料理人としても超一流であり、料理は普段美食倶楽部の料理人に作らせているが、8巻「スープと麺」では自ら冷やし中華を調理し周囲を驚かせています。ほか、美食倶楽部が人手不足に陥った際にも、自ら板場に立ち調理している(88巻「器対決」)。また、美食倶楽部の料理の基礎は雄山自身が調理を実演することで、中川・進藤をはじめとする設立初期の板前たちに直接指導しています。
「幻の魚」では鯖の刺身を下魚と罵っていたが、葉山の料理店「大しげ(実在店、現存せず)」にて、士郎に200匹に1匹程度しかいない“幻の鯖”の刺身を出され、旨さを認めつつも器のせいにしてしまうが、後日詫びの意味を込めて自作の器を大しげに寄贈する。また、前述した3巻「料理のルール」では、侮辱したフランス料理店に謝罪の意を込めて「フランス料理は偉大」とした記事を書き、見直しています。
「大地の赤」では士郎の緑健農法のトマト栽培にビニールハウスや化学肥料を用いていることに驚き罵ったが、その出来栄えに感動し、「対決スパゲッティ」では主要食材に起用した。結果、トマトの評価では士郎に敗北したものの、スパゲッティ自体の評価では「単純だが素材を活かして毎日でも食べたくなる」として高い評価を受け、返り討ちにしている。
「潮風の贈り物」では、お抱えの板前・古崎が恋人の鈴子を振って千葉の大きな料亭の娘に鞍替えしてしまい、鈴子が自殺未遂をするまでに至った。鈴子に思いを寄せていた岡星良三は、必死になって介抱のために料理を作り、雄山も責任を感じて鈴子のための料理を探すが、鈴子は何も口にせず、病状も悪化する。そのような中で、士郎が鈴子の故郷である伊豆の海苔や魚介類を使った料理を出し、エキシビションマッチで大金星を取られることになります。
海原(山岡) とし子:坪井章子
山岡士郎の母で海原雄山の妻。故人。享年は不明、名前は作品媒体により複数登場していますが、原作第111巻「福島の真実」の回想シーンで「山岡とし子」と名乗っています。
初登場作品は18巻「焙じ茶の心」における士郎の回想シーン。容貌は第111巻「福島の真実」にて、雄山と出会った頃の若い姿で初めて描かれました。それ以外では基本的にシルエットや後姿のみ描写です。また、登場場面ではほとんどが和装。
旧姓は山岡(士郎は家を出た後に「海原」姓ではなくこの姓を名乗っています)。
雄山との出会いは、雄山が美術大学に入学した夏休みに福島の霊山神社にお世話になっていた時、高校1年生のとし子と出会っています。
稀代の芸術家・美食家の妻として精神的に雄山と深い繋がりがあったことは明らかです。そのことは、とし子初登場回で、士郎の回想シーンにおいて雄山を罵った士郎に「あなたには人の心がわからないの?」と悲しい顔をしたり、なおも茶の焙じ器を叩き割る悪態をついた士郎の顔を平手打ちする場面、また同話にて士郎が小説家加村鯉一の妻真紀に自分の父親の母親に対する仕打ちを語ったときに真紀が、「お父様が立派な仕事を成し遂げるたびお母様は心から喜んだはず。それは自分自身の業績でもあるから」「夫婦のことは子供といえども他の人には決して分からないことがある」と語り、夫の横暴ぶりとそれに妻が献身的に応える場面がシンクロして描かれています。加えてチヨらの話はもとより、とし子を看取った医者の水村の証言(47巻「病の秘密」)、雄山からの告白からもそのことは窺えるが、生前の雄山の彼女に対する処し方が士郎の誤解を生んだことで、親子断絶の原因ともなった。だが、雄山の若い頃から彼の芸術家としての大成を誰よりも望み、そのために芸術家の妻として、また「美食倶楽部」の(運営に携わった記述は無いものの)女将として命を懸けて雄山を後押して多大な貢献をした。そのことは士郎以外の二人を知る人たちは理解していて、ゆう子も深く理解しているが、士郎だけは頑なに拒んでいたのです。
生まれつきの心臓疾患で徐々に心臓の筋肉が衰えていく難病に冒され、雄山は子どもを諦めるつもりだったにもかかわらず、「海原雄山という天才の血を残さなかったら恥だ」としてその意志を貫き士郎を産んだため、寿命を縮めてしまった(47巻「病の秘密」)。雄山は彼女の命日には毎年欠かさず墓参りに赴き、最も身近な中川ですら同伴させないほど妻を愛していたことがうかがえます。
彼女が雄山のために作った料理は事ある毎にチヨにより「奥様の料理」として、ゆう子に伝えられています。47巻「結婚披露宴」で雄山は「至高の中の至高」としてかつて彼女が作った惣菜料理を選び、その安価で平凡な食材のもたらした感動が、一切妥協しない自らの芸術の道を開いたこと、そして世に認められた後も気に入らぬ仕事で苦しむたびに「貧乏でもよい」という彼女の言葉が権威・権力に屈しない気迫と精神の源だったことを語っています。
唐山 陶人:富田耕生(テレビアニメ)
人間国宝の陶芸家。雄山の陶芸の師匠で、北大路魯山人の弟子。海原雄山も頭が上がらない唯一の人物。初登場3巻「和菓子の創意」。5巻「もてなしの心」で喜寿を迎えている。「究極のメニューVS至高のメニュー」の審査員の一人。士郎を実の孫のように可愛がり、士郎が雄山と対立し始めた高校生の頃から、士郎はほとんど彼の家で過ごすようになった。士郎と雄山の反目ぶりに心を痛めており、なんとか仲直りをさせようとしばしば間に入っていた。一度言い出したら聞かない頑固な性格で、人に頭を下げられない。おだてに乗りやすく、雄山にも丸め込まれてしまう(17巻「エイと鮫」)。警察の上層部に顔が利くらしく、スピード違反などの罪に問われたサンダーボルツの面々を釈放させたこともある(5巻「鮮度とスピード」)。最初の妻に死なれた後、孫の年ほど離れた鈴村領子と知り合い結婚。領子からは「陶人くん」と呼ばれている。領子の台詞によると女性にはかなりモテるらしいが、作中では再婚後ということもあってか、具体的な描写はありません。唐山陶人一門は弟子が3000人もおり、何人かは作中にも登場したが、気に入った弟子は海原雄山以外一人もいないとの事。究極のメニュー対至高のメニューでは審査員の幹事を務めています。
前述のように北大路魯山人の弟子だが、88集「器対決」で魯山人について語るシーンでは、弟子という立場で言及することはなかった。
唐山 領子:藤田淑子
唐山陶人の後妻。初登場5巻「もてなしの心」。旧姓鈴村。美術雑誌の記者として取材に訪れた際に知り合い、本人曰く激しい女の戦いを経て、陶人と結婚した。陶人を「陶人くん」と呼んで人前でも構わずべたべたしている。遠縁にあたる美術商の男が贋作の売買に手を染めたため、一時陶人と雄山の仲が壊れかけたことがあった(48巻「団欒の食卓」)。
ウィンナー入り味噌汁など奇抜な料理を作ったり、鯖寿司を作って陶人に食べさせて食あたりを起こさせて緊急入院させるなど、食に関しては斬新な一面もある反面、トラブルメーカーでもあります。
京極 万太郎:渡部猛(テレビアニメ)
京都の商人で大富豪。初登場1巻「平凡の非凡」。大正8年7月17日生まれ(ドラマ版では大正13年4月1日)。味覚のみで米の品種や産地を当てるほどの食通で「美食倶楽部」会員であり、「究極のメニューVS至高のメニュー」の審査員の一人。東京にも大邸宅を持っている。山岡に「岡星」で故郷高知県の材料を使った料理を振る舞われたのをきっかけに山岡たちと親しくなり、年の離れた友人ともいうべき関係となっていきます。山岡が海原家を飛び出す前から顔を合わせていたようで、初登場時に雄山の息子ではないかと問い掛けていました。雄山と士郎の確執に心を痛めていた一人で、二人の和解を目指していた。先立った妻との間に二人の娘がいる。
劇中で山岡の正体(海原雄山と親子喧嘩して家出した)をいち早く見抜いた人物でもあります。その上で雄山に士郎が東西新聞で働いていることを知らせており、雄山が東西新聞社を訪れたことで社員全員が、士郎の正体を知ることになります。ただし士郎の幼少期の顔しか知らず、大人になった今の顔と雄山の妻であるとし子の旧姓(山岡)を知らなかったせいで、すぐには士郎の正体を見抜けずにいました。
高知県の中村から四万十川沿いの上流に七里ほどのぼった「三つ又村」にある貧乏な家の出身。幼少期から米問屋に丁稚奉公し、戦前の米相場での儲けを元に現在の地位を築いた(17巻「海のマツタケご飯」)。しかし故郷には長年帰っていなかったため、海原雄山が出した四万十川の鮎で子供時代を思い出し、感涙してしまいます(8巻「鮎のふるさと」)。87巻の「日本全県味巡り 高知編」では山岡たちを案内しました。
人情家であり、金を貸していた相手が借金を苦に夜逃げしたにもかかわらず、京極が肩代わりをして戻って来るよう説得したり(27巻「日本料理の理」)、気に入った人間には無担保無利息無期限で資金を出したりと、心から信用出来る人間には損得なしの付き合いを申し出るほどです。また美術品の収集家でもあり、ルノワールなどの名作を所有しています。東南アジア諸国との晩餐を美食倶楽部で開催するよう総理に斡旋したり、金上の美術品詐欺の際に裏の世界を通じて情報を集め東西新聞へ協力する(51巻「疑わしい日」)など、フィクサーとしての一面をもっています。
日本画家の清谷吟香とは幼馴染にして大親友であり、芸術のみならず料理でも張り合う仲。京極は吟香を丹波の山林に招待してマツタケご飯を振舞うが、海にもこれに劣らぬ物があると反発し、初夏に「海のマツタケご飯」を食わせると宣言。しかしその矢先に脳出血を発症し、記憶喪失に陥ってしまう。
「海のマツタケ」の正体を暴くべく、山岡は吟香と親交があるという葉山の漁師のもとを訪れ、そこで正体がトコブシである事を知る。その後、吟香は海のマツタケご飯を食べたことで記憶を取り戻し、京極に勝利宣言をした。
岡星 精一:若本規夫(テレビアニメ)
▲岡星兄弟(左が)弟の良三。(右が)兄の精一。
銀座の和食料理屋「岡星」の主人。初登場1巻「平凡の非凡」。山岡とは、京極万太郎にご馳走する店として辰さんが山岡に「岡星」を紹介したのをきっかけに知り合いました。山岡の料理面での最大の協力者であり、料理研究は「岡星」で行うことが多いです。また「究極のメニュー」対決における調理を担当しています。山岡たちの良き理解者でもあり、大原社主と衝突して退社しようとした山岡たちをたしなめたことがある(45巻「呪われた結婚!?」)。
「究極のメニュー」作りへの協力を惜しまない一方、海原雄山を尊敬していて、弟の良三を「美食倶楽部」に修行に行かせている。高校を中退して料理の道へ入り、主に関西で修業しました。伝統的な日本料理だけに留まらず、中華料理や西洋料理なども参考にした創作料理も多く生み出しており、周囲から「天才・岡星」と呼ばれています。弟子として田山勇一と大里数夫を雇っている。
妻の冬美とは料亭「吉長」で修業中に知り合って結婚。その後独立し、2人で「岡星」を始めます。しかし隣家からの延焼で一度店を失い、自分の運のせいと考えた冬美に一時期失踪されてしまった。だがその後また一緒に暮らし始め、現在は冬美と一人娘の3人家族。生真面目な性格で、料理の世界一筋に生きてきたためグルメブームなどの「流行感覚」「高級志向」な考えに苦悩する時があり(37巻「激突アボリジニー料理!!」)、その後「うつ病」になってしまった(96巻「究極の料理人…春編…」)。一時は休店まで追い詰められて自殺も考えたが、山岡の考案で西健一郎の「究極のメニュー…西音松・西健一郎の料理 春・夏・秋・冬…」を食べてからは閉店を一応思い止まり、完治はしていないものの店を再開し治療を続けている。フグ調理師の免許を取得しており、フグ調理も行っている。(不思議なから揚げでは、フグの頭部のから揚げを山岡が用意したフグの調理に協力している)
岡星 良三:関俊彦(テレビアニメ)
「美食倶楽部」の椀方を務める料理人で、岡星精一の弟です。初登場4巻「板前の条件」。料理の腕は立ち、美食倶楽部には50倍以上の倍率を突破して採用されました。
当初は未熟な面が目立ち、料理人でありながら煙草を吸うなど(気持ちを安定させるのが目的だった)たびたび雄山の怒りを買い破門されるが、そのたびごとに山岡たちのお陰で復帰できました。その後は雄山の信頼も厚くなっていく。以前は兄には料理の腕ではかなわないと言われていたが、現在では若手では日本一といってもよい料理人(山岡談)に成長しています。本業の日本料理以外にも、イタリア料理や陶芸に興味をもつなど才能は多彩です。
特に陶芸に関しては雄山も陶人も才能を認めている(48巻「団欒の食卓」)。10巻第8話「潮風の贈り物」では、山岡の手助けを得て美食倶楽部の仲居 鈴子を自殺未遂後の衰弱状態から立ち直らせ、将来を誓い合う仲になったが、その後の記述はありません。雄山に代わって「究極のメニュー」との対決を任せられたことがあり(81巻「イタリア対決!!」)、その実力が認められ和解前の対決終了時に雄山直々に「至高のメニュー」の中心とすることを皆の前で発表されました。同じ時期に東西新聞「究極のメニュー」を山岡から引き継いだ年少の飛沢には「気楽にやろうよ」と友好的な感情を持っていて、良きライバル関係となっている。
美食倶楽部の一員で雄山の部下であるが、雄山の差し金で山岡との折衷や情報工作をする役回りでもあり、究極対至高の対決のテーマ決定などの際に重要な役目を担っています。
近城 まり子(旧姓、二木まり子):島津冴子
▲栗田ゆう子(左)と二木まり子(右)。二人は、山岡士郎をめぐって争うことになるが・・・
勇の妻。旧姓:二木。元東西新聞社出版局東西グラフ編集部記者。日本屈指の財閥である二都グループを束ねる二木家の令嬢で、祖父は二都銀行会長、父は二都銀行頭取の二木崇。初登場は、21巻第3話「新しい企画」。
パリ大学文学部卒で、パリで現地採用され東西新聞社に入社。ゆう子より1年入社が早い。ゆう子からは原作では「二木さん」、アニメでは「まり子さん」と、呼ばれている。
東西新聞社時代に士郎に惚れ、士郎に近づくため「世界味めぐり」の企画を発案。大胆なボディタッチやアプローチで士郎に迫ってはいつもゆう子を困惑させていました。至高のメニューとの対決の際にも士郎やゆう子と行動を共にしたことが多いが、至高側の情報を不正入手したり、士郎とゆう子を仲違いさせ、それが原因で至高のメニューに負けるなど足を引っ張ることもあった。全ては士郎への思慕故で、勇と協力して士郎との結婚を目指すが実現せず、その過程で次第に惹かれ始めていた勇と結婚。士郎・ゆう子組と合同で結婚披露宴を挙げる。その後妊娠を機に東西新聞を退社した。今では娘一人の母親であり、二人目も妊娠している。
何かにつけて積極的で強引なまでに事を進める性格で、自身のことを「世にも稀な美人で頭が良くて教養があって気立てがいい」と言ってのけるなど自信過剰な面があります。また、団一郎を「成り上がり」と言って嘲笑したり(キャビアの食べ方で非難した折に成り上がりと評した)、勇のかつての女性関係を知って一時失踪したり、味覚の経験の乏しい三沢るり子を罵倒したりと、かなり自尊心が強かった。子供が生まれて母親となってからは心境に変化があったようで、かなり穏やかになった模様です。
近城 勇:難波圭一
山岡の悪友。プロカメラマンで近城フォトスタジオを主宰しています。東西グラフ「世界味めぐり」用写真の撮影依頼をきっかけに、士郎・ゆう子の両名と知り合います。当初はグルメブームに嫌悪感を抱き、食べ物を撮ることに否定的な立場だったが、ゆう子の説得を受けるうちに彼女自身に惹かれ「世界味めぐり」の仕事を引き受けました。
初期は挑戦精神をモットーとし、鼻っ柱が強くてストイックな人物だったが、徐々に柔和な人格に変わった。早くに父を亡くし、母と弟らと貧しい少年時代を送ってきたため、母親には特別の思いを持っています。千葉県銚子市出身の母親がよく出してくれたカジキが好物です。
前職場では上司である先生にカジキのことを理解されずに、「親にろくなものを食わされなかったんだ」とバカにされ激高、ケンカをしてクビになりました。山岡と共に寿司ともで食事していた時に帝都新聞の面々と遭遇した際にも、帝都新聞側がカジキのことを卑下し前職の上司と同様のことを発言したことに怒る。が、山岡の仲介と作戦で後日帝都新聞側と再会、冬に千葉県銚子市までカジキの一本釣りに行って改めて食べさせたところ、帝都新聞側がカジキ(旬のマカジキ)を高評価し「マグロにも勝る」として無知であったこと、先日の無礼を認め近城に謝罪するという出来事があり、以降は『究極対至高』のライバルである山岡の実力に一目置き良き理解者となっている。なお、カジキは『カジキマグロ』とも呼ばれることがあるが「カジキ」と「マグロ」は魚の科すら違う、別の種類の魚である。
カジキの一件で亡母の愛情の深さを理解し、食べ物は心であることを理解します。撮影の視点も変わって良い写真が撮れるようになる。士郎のことを「山岡の旦那」と呼びます。現在では共に素人ラグビーチームで汗を流し、結婚披露宴を合同で行うなど気の置けない友人であるが、かつてはゆう子を巡るライバルでもあった。まり子と協力し、惚れたゆう子へ積極的にアプローチを掛けるが、既に士郎に惹かれていた彼女にその想いが実ることは無く、最後は自分から身を引いた。その過程で惹かれ合っていたまり子と結婚。士郎とゆう子の結婚、自らとまり子の結婚に伴い四角関係が解消されます。今では長女の幸子を授かり、二人目も生まれることが分かった。
写真に対する熱意や姿勢を評価され、写真嫌いの海原雄山が、唯一認め専属カメラマンとして選んでいます。なお、勇本人は海原雄山に対しては、本人を前にしていなくとも「海原先生」と呼び尊敬語を用いるなど、一人の人間として尊敬の念を抱いています。初登場は、21巻5話「挑戦精神」。
中松警部:福留功男
▲声優は、当時日テレアナウンサーだった福留功男さんが、好演しています。
山岡の悪友。警視庁銀座中央警察署勤務の警察官、階級は警部。初登場は2巻「そばツユの深味」。下の名前は不明で、自宅では妻である歌子に「警部」と呼ばれています。
そば屋の屋台の件で山岡たちと知り合い、それ以降、家族ぐるみで付き合いが続いています。うっかり捜査情報を漏らしてしまうこともありました。昔気質の型破りな性格で、人情に厚い好人物。交友関係も幅広く、場末の情報屋から警察のお偉方まで様々なパイプを持っています。細かい作業が苦手。強面の風貌で、性格と相まってよくヤクザと勘違いされることがあります。一方で、短気で思ったことをすぐ口にしてしまう性分で、大石警部に女児が誕生した際には「女の子で大失敗」と発言し、男の子でないことをからかう無神経な一面や、お汁粉の嫌いな大学の同窓生に無理矢理食べさせ笑いものにしようとする子供じみた面も多々あり、それらの悪癖から比較的トラブルを起こしやすい。
剣道および抜刀術の名手であり、師匠針沢朝雲からも「中松に斬られた者は痛みを感じないであろう」と評されています。大学時代は大石とともに剣道部所属。
水森歌子と結婚。男の子を授かり、剣吉郎と命名。通称は「オニの中松」だが、歌子の前ではデレデレしています。
自称「麺喰い」で、好物はそばです。特に新そばであれば、50枚以上食べることができる(23巻「真夏のソバ」)。うなぎ、トコロテン、カレーライスも大好きです。
特にカレーライスは「日本風カレー」と「スパイスの秘密」の2話も登場する。苦手なものはジャガイモ、ナス、梅干しだが、後にナスは克服。じゃがいもも調理法によっては食べることができます。
当初は、アイスクリームも女子供が食べる物だと嫌っていたが、歌子にほれ込んでから態度が変わり、歌子のアイスは大好きになりました。妻の歌子が生まれて初めて女に惚れたとして事実上の初恋相手である。
「氷菓の恋」では山岡と栗田に相談する際に笑わないで聞いてくれと念を押して歌子とアイスに関する相談をしたが、(鬼の中松警部が)女に惚れたと2人に約束を破られ失笑されています。
(美食倶楽部)
海原雄山が創立し主宰する会員制の料亭。銀座裏の一等地に大料亭顔負けの建物を構える。雄山の育てた一流の料理人を使い、金に糸目をつけずに誂えたあらゆる料理を食べさせる。会員には政財界のトップレベルに在る貴賓紳士が名を連ね、会員というだけで大変名誉なこととされる。ただし、会費は高額で入会にも厳しい審査があり、雄山に気に入られなければ入会できない。世の多くの和食料理人にとって憧れの場所であり、会員同様、何人もの志望者がいる。
中川 得夫:仲木隆司
▲部下の今後を心配する、美食倶楽部中川主任(左)。右は美食倶楽部の宇田。宇田は美食倶楽部を辞めて、ハンバーガー店を開こうとするが・・(第25話より)
「美食倶楽部」の調理場主任を任される料理人です。初登場4巻「板前の条件」。50歳。「美食倶楽部」の設立初期から雄山に付き従っていて最も信頼された公私に渡る付き人でもあります。
人のよい性格のためか、外で傍若無人に振舞ったり、士郎に対して辛く当たる雄山の後ろで小さくなってついていくことが多く、そのため、士郎と雄山との間で板挟みになることが多いです。外出時は縦縞の着物がほとんどだが、一時、背広を着ていることもあった。士郎のことも幼少から知っており、士郎は「中川」と呼び捨て、中川は士郎を「若」「士郎さま(もしくは士郎さん)」と呼んでいます。妻のチヨ共々、最も士郎と雄山の和解を望んでおり、様々な場面で間に立つことが多い。夫婦で質素な木造長屋に住んでおり、子供がいないため、東西新聞の士郎と飛沢周一を実の息子のようにかわいがっています。104巻「食と環境問題」では、美食倶楽部の料理人から「中川支配人」と呼ばれています。
妻のチヨは士郎の乳母であるが、得夫は士郎が中学生になってから厳しく料理の指導をしており、士郎の養育には妻のチヨとともに関わっている。
美食倶楽部の若手料理人の良三らも息子のようにかわいがっています。士郎のことは、美食倶楽部を飛び出して母の旧姓の山岡姓に改姓した後でも若(わか)や士郎様と呼び、雄山の息子で美食倶楽部の跡継ぎとして扱っています。
和食に傾倒しているためか、洋食には疎く、ハンバーガーの要素で宇田が美食倶楽部を退職してハンバーガー店を開きたいと言い出した時は、ハンバーグに関する直接的なアドバイスができず、全て山岡が行っている(宇田はハンバーグ自体は素材も良い物を厳選し宇田の焼き加減も絶妙で最高の出来であったが、パンのバンズが不味くてハンバーガーとしては出来が悪かったところを、小麦粉の全粒粉入りの良質なバンズを用意し宇田の店のゴールドバーガーは大繁盛することになる)
▶中川 チヨ:近藤高子(テレビアニメ)
▲中川ちよ。
中川得夫の妻で、美食倶楽部の筆頭格の仲居。初登場21巻「二人の花嫁候補」。子供はいない。雄山の妻であり士郎の母であるとし子を非常に尊敬しており、美食倶楽部設立初期より彼女に従って仲居を務め続けている。士郎が産まれる前に子供を妊娠していたが流産してしまい、母乳の出ないとし子に代わって母乳を与えていました。病弱な彼女に半ば代わって士郎を育てた乳母(というよりはもう一人の母のような存在)で、士郎が家を飛び出した後も亡き母の代理として彼のことを気に掛けており、何かと世話を焼いてきました。ゆう子のことも実の娘のように可愛がり、士郎たちの子供の陽士や遊美に至っては実の孫のように溺愛しています。また得夫ともども、東西新聞の飛沢周一を実の息子のようにかわいがっている。とし子が遺した料理やその思いを士郎とゆう子に伝える役割も担っています。子供がいないのを気にしていたようであり、そのことで中川に愚痴を言うこともある。元々心臓も弱く、胆石で入院していた時期もあったが、退院後日本酒の一升瓶をラッパ飲みしたり、すごい勢いで走り回ったり、豪快に笑ったりするなどと、設定を無視した行動もあります(2人の花嫁候補では士郎のお見舞いで来た際に士郎の住宅の近所で火事が発生し、消火のためにバケツに水を入れて駆けつけて消火活動を行っている、士郎も風邪をこじらせていたが消火器を持参して消火活動に加わっている)。かつてともに働いていたおウメ・おタネとともに「海原一家の三美人」と呼ばれていたと自称している。作中では士郎の嫁さん探しをしたり、士郎が風邪で寝込んでいる際に看病に来たりするなど、厳しくも優しい乳母としての対応をしている。
士郎が風邪をひいた際には胸騒ぎがして見舞いに行っている。さらにゆう子とまり子が見舞いに来た際は勝手に花嫁候補とまで呼んでいてゆう子には不満がられる(まり子はチヨのことを山岡への影響力が強そうなのでチャンスとして快諾している)。
ゆう子が士郎に内緒で雄山に(雄山と共著もしたことがある仲であった)木曾氏を説得してもらうために美食倶楽部に来る際には仲介を頼まれていたが、雄山がいきなりゆう子の試験を行ったため士郎に密告しており、士郎も慌てて美食倶楽部に駆けつけるが途中でタクシーが渋滞にはまって降りて走って来たが間に合わず、ゆう子の試験は無事に終了してしまいます。
▲「究極のメニュー」1話 | 美味しんぼ
★『美味しんぼ』は、UーNEXT、ABEMA、視聴可能です。
主題歌
オープニングテーマ
♬「YOU」(第1話 - 第23話)
作詞 - 平出よしかつ / 作曲 - 和泉常寛 / 編曲 - 大谷和夫 / 歌 - 結城めぐみ
第23話まで本編への導入部にも用いられている。
▲美味しんぼ 後期 OP「Dang Dang 気になる」 フル full ver
♬「Dang Dang 気になる」(第24話 - 第136話)
作詞 - 売野雅勇 / 作曲 - 林哲司 / 編曲 - 船山基紀 / 歌 - 中村由真
導入部及び劇中に挿入曲としても用いられている。
エンディングテーマ
♬「TWO OF US」(第1話 - 第23話)
作詞 - 平出よしかつ / 作曲 - 和泉常寛 / 編曲 - 大谷和夫 / 歌 - 結城めぐみ
▲【美味しんぼ ED】 『LINE』 / OISHINBO Ending Theme Song
♬「LINE」(第24話 - 第136話)
作詞 - 売野雅勇 / 作曲 - 林哲司 / 編曲 - 船山基紀 / 歌 - 中村由真
▲美味しんぼ 作業用BGM(1988年~1992年)
テレビアニメ『美味しんぼ』で使われたBGM集です。個人的におすすめ(^^♪
【美味しんぼ・作品感想】
究極の料理をめざすことをベースに、人との交流の大切さを訴える、現代社会に展開させたアニメドラマの一品と思います。本作の山岡士郎と海原雄山のやりとりを観ていると、1968年3月30日~1971年9月18日に放送されていた『巨人の星』
の星飛雄馬と星一徹の親子像と重なる部分を感じます。
本作は料理対決を通して、父と子がそれぞれの人生という場で様々の人と出逢い、親子って何?家族って?夫婦って?と気づかされることの多い作品です。アニメは途中で打ち切りになってしまいましたが、海原雄山の心理描写は巧みで、またキャストの大塚周夫さんの演技はテレビ、映画などで雄山を演じた俳優陣の追随を許さないほどの迫力のあるものでした。
本作は色々と、読者や批判対象となった企業・団体などから本作に抗議もありましたが、それだけ原作者の雁屋さんが、早く社会に問いかけたい思いが、強かったのではないかと個人的には考察します。当たり前の話ですが、人間は食べないと生きていけません。そして一人では生きていけません。その点において食することの大切さを考えさせてくれた『美味しんぼ』は、昭和を代表する料理アニメの一つだと思います。
★今回で、『鉄腕アトム』から日本のテレビアニメ昭和徒然史を時系列で紹介してきましたが、今回で終了させていただきます。昭和時代のアニメをほんの一部紹介しただけにすぎません。平成、令和の時代もアニメ作品は誕生しています。これからもまた別の視点で日本の誇れる産業の一角としてのアニメ作品をご紹介させていただければと考えています。
今後も『おじさんとバイクの徒然話』よろしくお願いいたします。乱文で失礼いたしました。
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