🔶前記事スタジオジブリのがんばるタヌキ『平成狸合戦ぽんぽこ』におきまして、作品の概要の記述を書きながら、故 高畑勲さんは当初、『平家物語』を映像化しようと試みていたようなのですが、なかなか実現せず、宮崎駿さんと鈴木敏夫さんの2人が考えた案をもとに狸の平家物語のオリジナルシナリオを執筆しました、と記しました。
実は、今日アニメの徒然小道で紹介したい作品というのは、この『平家物語』で、今年2022年1月13日~3月24日 全11話でフジテレビの深夜テレビアニメ枠で放送された作品です。
【平家物語・概要】
『平家物語』(へいけものがたり)は、鎌倉時代の軍記物語である『平家物語』を描いたテレビアニメ作品です("山田尚子×吉田玲子の黄金タッグで「平家物語」がテレビアニメ化!超豪華なクリエイター&声優が集結". MOVIE WALKER PRESS. ムービーウォーカー)。作家の古川日出男さんが現代語訳した『平家物語』(「池澤夏樹=個人編集 日本文学全集」所収、河出書房新社)をベースにして構成されています。制作は、サイエンスSARU。2021年9月15日よりFODで先行配信され、2022年1月から3月までフジテレビの深夜アニメ枠『+Ultra』ほかでテレビ放送されました。
物語の語り部となる琵琶法師の少女「びわ」が主人公に据えられていて、彼女と平家の人々の交流を軸に、叙事的な史実に留まらず、時代に翻弄されながらも懸命に生きた人々の群像劇として描かれています。
👆嚴島神社の創建は6世紀頃。島全体がご神体としてあがめられていたとのこと。平安時代の終わりには、地元の豪族である佐伯氏が(広島には佐伯という姓が多い)平家の頭領・平清盛のバックアップを受けて、海にせり出す形の本殿を造りました。当時の平清盛の権勢を表す建造物です。
日本三景の一つ(世界遺産に登録されているのは厳島神社だけです)。今まで何度も台風や高潮被害に遭いながらも復旧を重ねています。
【平家物語・考察、感想】
いつもは、記事末で考察、感想などを記しているのですが、今回は最初に考察、感想などを記して作品紹介に入っていきたいと思います。「平家物語」といえば、今まで学校での授業などでふれたことのある方が大半だと思います。
最初に、本アニメ作品はを観て、まず感じたことは分かりやすく表現するならば、『素晴らしい!』の一言に尽きます。
子供の頃から、勉強はあまり好きではありませんでしたが、歴史だけは大好きで、鎌倉時代から、琵琶法師から伝えられたとされているこの物語は思い出深い物語です。今まで『平家物語』『新・平家物語』『源平盛衰記』『平清盛』など実写映画やTV、大河ドラマなどでも制作されてきました。どれも軍記物語としてあるいは日本における叙事詩として描かれていたものがほとんどです。本作においては、主人公が、琵琶を抱えた少女であり、アニメオリジナルキャラクターびわの視点で、叙情的な作風の中で描写展開されています。
また、本作においては平清盛の息子であり、平家の重責にして父清盛の名参謀として生き、左目に亡者を見るという平重盛と、不思議な右目の眼力を持つびわとの交流を軸に描かれています。歴史的には専横を極めたと言われる平清盛も、一つの時代を生きた男として描かれています。軍記としてよりも、登場する人物一人一人が、時代を生きる人間の苦しさ、辛さが、良く描かれているアニメ作品です。
アニメ作品として観ても、絵巻物を彷彿させる美術設定、色彩とアニメキャラクターデザインともよく調和しています。この調和が11回という話数の中でも最後まで惹きつけているのたのだと個人的にはとらえています。
日本の歴史を彩るアニメ作品としてお勧めできる作品だと思います。まだ、ご覧になられたことのない方は、是非。
【平家物語・あらすじ】
時は平安時代末期、世の中は平家一門が栄華を極めていました。少女・びわは、琵琶法師の父親を平家の武士に殺されたあと、平家の屋敷に侵入します。そこで出会った平清盛の長男である平重盛に「お前たちはじき滅びる」と予言します。右目で亡者が見える重盛はびわに共鳴し、なぜか、彼女を屋敷に留め置き、息子の維盛・資盛・清経の三兄弟とともに生活させることにするのでした。
平家一門棟梁の平清盛は、娘の徳子を高倉天皇のもとに入内させ、さらなる栄華を追い求めようとします。一方で、その強引さに踏みにじられる者達も多く生まれました。徳子入内から6年後、平家に対する反発が、ますます高まり、後白河法皇の近臣達が平家打倒の陰謀(鹿ケ谷の陰謀)を計画しますが、密告により発覚してしまいます。清盛は、関係者を処罰したあげく、後ろ盾にいる法皇を幽閉しようともくろみます。これを察知した重盛は、清盛の面前で決死の諫言を行います。
しかし、徳子は男の子を産み、清盛はさらなる栄華を求める縁としようとしたのです。度重なる天災や妹盛子の死によって重盛は、いよいよ不安を募らせるようになります。
重盛は維盛・びわとともに熊野参詣を行い、平家の棟梁としての清盛の野望を留める願いが叶えられないなら、来世の菩提と引き換えに自らの命を縮めるよう祈願するのでした。帰京した重盛は病の床につき、夢の中、平家の滅亡を告げられる。すべてを悟った重盛は、びわの奏でる琵琶の音を聴きながら最期の時を迎えるのでした。
重盛の死後、自分の片腕をもぎ取られた思いで、清盛が気落ちしていると見た法皇は、平家の力をそぎ取るために重盛や盛子の領地を没収してしまいます。これに激怒した清盛は、兵を率いて上京、公卿を粛清、法皇を鳥羽離宮に幽閉(治承三年の政変)、徳子の子を安徳天皇として即位させたのです。
平家の横暴に耐えかねた源頼政は、以仁王(もちひとおう)を担いで反乱を起こそうとしますが、密告によって発覚し、知盛・重衡・維盛によって以仁王らは討たれてしまいます(以仁王の挙兵)。
清盛は平家を守るため、海に近い福原(現在の神戸)への遷都を断行します。福原でびわと三兄弟は、敦盛や重衡とともに一夜の宴を開きます。
一方で伊豆国に流されていた源頼朝は、法皇による平家追討の院宣を受け取り挙兵します。維盛は、頼朝追討の総大将となるが、頼朝が大軍を集めたことと、斉藤実盛の語る東国武士の姿に恐怖してしまいます。その夜の夜半に水鳥が飛びだつ音に驚いた軍勢は一戦もしないうちに退却した(富士川の戦い)。また比叡山からの嘆願を受けて、清盛はわずか半年で都を平安京に戻さざるを得なくなってしまいます。さらに興福寺の反発に業を煮やした清盛は、重衡に命じ興福寺を攻撃させてしまます。しかし明かりを取るためにはなった火が燃え広がり、興福寺と東大寺を含む南都は灰燼と化してしまうのでした。さらに高倉上皇が危篤に陥り、焦る清盛は、徳子を法皇の後宮に入れようとするが拒絶されてしまいます。
各地で源氏の蜂起が相次ぐ中、清盛は熱病でこの世を去り、平家はいよいよ孤立を深めていきます、資盛はびわに屋敷から出ていくよう命じます。びわは母の足取りを追って越後国に下るが、すでに京に戻ったと聞かされます。墨俣川の戦いでは平家軍は、頼朝を破りはしますが、源義仲が北陸道に勢力を拡大していきます。維盛は大軍を率いて義仲討伐に向かいますが、倶利伽羅峠(くりからとうげ)の戦いで夜襲を受け大敗北を喫します。
七万もの軍勢を失った平家は、義仲の軍に対抗することもできず、安徳天皇を奉じて都落ちに追い込まれてしまいます。再起を図って九州の大宰府に向かいます。びわは京に戻ったが、その頃、都は義仲の兵が狼藉を極めていたのです。びわは義仲の兵に襲われるが、静御前たち白拍子によって救われるのでした。
大宰府の緒方惟栄はかつて平家の家人であったが、朝廷からの院宣を受け取り、平家を匿うことはできないと退去を求めるのでした。苦難の道行きの末に、筥崎にたどり着いた平家だったが、周囲は敵ばかりであり、絶望した清経は入水自殺を遂げてしまいます。その死を見たびわは、静御前らとともに、隠棲していた母に出会います。母との対話の中で自分にできることは「祈る」ことであると気づいたびわは、平家のいる西を目指すのでした。一方頼朝によって派遣された源義経は、法皇と対立した義仲を討ち、一ノ谷の合戦で常識をかけ離れた奇襲で平家を打ち破るのでした。
平家は屋島に逃れるが、維盛はひとり一門を離れ、滝口入道のもとで出家、びわとの束の間の再会の後に補陀落渡海を遂げる。資盛は法皇に赦免願いの手紙を書くが返事が来ることはなく、代わりに伊子の手紙を携えたびわが資盛のもとに訪れた。びわは祈りをこめて平家を語るため、すべてを見届ける覚悟を決めていたのです。
源頼朝は、平家を滅亡にまで追い込むことを決め、義経の攻撃によって屋島も陥落します。平家の軍は、壇ノ浦に追い詰められるのでした(壇ノ浦の戦い)。戦は当初水上戦を得意とする平家方が優勢であったが、イルカの大群の襲来とともに風向きが変わり、援軍も到着したことによって、源氏方が優勢となります。これまでと悟った平時子は、安徳天皇を抱いたまま入水するのでした。徳子もそれを追って入水するが、びわによって制止されるのでした。しかし知盛ら平家の人々は、次々に海中に没していったのです。
👆壇ノ浦古戦場。関門海峡の潮の流れは速い。(2016年角島ソロツーリング時の立ち寄り画像から。)
戦後、後白河法皇はひとり、出家した建礼門院徳子の元を訪れるのでした(大原御幸)。
👆TVアニメ「平家物語」第二弾PV 2022年1月12日(水)よりフジテレビ「+Ultra」にて毎週水曜24:55〜放送/FODにて全話先行配信中
【平家物語・登場人物、キャスト】
(主人公)びわ:悠木碧
本作の主人公で、琵琶を抱えた少女。アニメオリジナルキャラクターです。父親は、盲目の琵琶法師、母親は白拍子だが消息不明です。「びわ」は本名ではなく、父も名前を呼ばなかったため自ら「びわ」と名乗っています。右目だけが青く、この目で「未来(さき)」を見ることができる。
父が平家の武士に斬られた後、右目で見た平家の行く末を伝えるため平家の館に忍び込み、重盛と出会います。その後は重盛に引き取られ、重盛の子供たちと暮らし成長していく。女装束を拒み、髪を肩で切りそろえた禿(かむろ)に水干を着ています。重盛の子たちが成長する一方で、風貌はほとんど変化しません。重盛の死後、その左目を受け継ぎます。福原で白い子猫を拾い、その後はともに行動している。一部のシーンでは、長い白髪を持った姿で『平家物語』の語りもします。
(平家一門)
平重盛(たいら の しげもり):櫻井孝宏
平清盛の子で、平家の棟梁でもあります。謹厳実直な人物で、横暴な父の行いと、平家の行末に心を痛める。
左目の色が異なり、この目で亡者を見ることができる。びわが父親を平家の侍に斬られたことを見抜いて哀れみ、子供たちの遊び相手という名目で屋敷に引き取ります。
平徳子(たいら の とくこ):早見沙織
重盛の異母妹。清盛と時子の娘。入内して高倉天皇の妻となるなりますが、子供には6年経っても恵まれないなどの事情に悩まされますが、待望の果てに息子が生まれます。聡明で快活な女性でびわと親しくなるが、びわは彼女の「未来」を見てしまいます。高倉天皇は徳子以外の女性を寵愛することが多く、平家と朝廷の間で悩んだ徳子はすべてを「ゆるす」ことを思い定める。夫の死後は安徳天皇を守ることを決意するが、平家と運命をともにすることになる。
平維盛(たいら の これもり):入野自由
重盛の長子。気が弱いが心優しい性格。院近臣藤原成親の娘・新大納言局を妻とし、高清らを儲けます。しかし鹿ヶ谷の陰謀発覚後は、この縁が重盛を窮地に追いやられます。舞が得意で、人々から称賛されるが、戦には向かず、初陣では心に大きな傷を負います。富士川の戦いでは一戦もしないうちに退却したことで清盛の怒りを買い、武士として強くならねばという強迫観念に取りつかれてしまいます。清盛没後は武士として活躍するが、倶利伽羅峠の戦いで地獄を見てしまう。
平資盛(たいら の すけもり): 岡本信彦、小林由美子(幼少期)
重盛の次男。勝ち気で、びわとは軽口を叩いては喧嘩する間柄です。しかし幼馴染として大切に思っており、びわが清盛に呼ばれた際には維盛と共に同行したり、平家が孤立を深めていく中では、わざときついことを言って追い出します。一途であり子ども時代から徳子の官女である伊子に想いを寄せる。鷹狩に出かけた際、摂政・松殿基房の前で下馬しなかったため暴行を受けます。清盛は報復として基房の行列を襲撃する騒動(殿下乗合事件)を起こした。その後、重盛によって伊勢国で謹慎させられる。情勢や人物を客観的に見ているところがあり、兄弟にも遠慮なく物を言う。
平清経(たいら の きよつね):花江夏樹
重盛の三男。笛が得意で、重盛の死後は敦盛と行動することが多い。明るい性格で、資盛からはおつむが軽いと言われていたが、都落ち以降は悲観的な思いに取り憑かれます。
藤原経子:本名陽子
重盛の妻で、藤原成親の妹。
平清盛(たいら の きよもり):玄田哲章
重盛の父。平家の棟梁の座を重盛に譲り、出家して入道(僧侶姿)になっているが、一門の実権を握っています。今の世を変えるという志を持ち、斬新なものを好みます。「おもしろかろう?」が口癖。豪放磊落な性格で、強い権力欲の持ち主。徳子は他人を駒としか見ていないと評しています。
平時子(たいら の ときこ):井上喜久子
清盛の妻。奔放な夫に振り回されているようにみえますが、しっかりと手綱は握っています。
平宗盛(たいら の むねもり):檜山修之
重盛の異母弟。清盛と時子の子。重盛に対抗心を持ち、びわは嫌味な男だと思っています。重盛の死後、平家の棟梁を引き継ぎますが、源仲綱の馬を取り上げ「仲綱」という名をつけて辱め、反乱のきっかけを作るなど軽率な振る舞いが目立つ。
清盛没後には酒宴に明け暮れ、情勢に翻弄されるばかりであります。
平時忠(たいら の ときただ):青山穣
時子の弟。
平敦盛(たいら の あつもり):村瀬歩
清盛の弟・経盛の子。笛が得意で、清経に憧れている。一方で武士に憧れ、重盛や重衡を尊敬している。一ノ谷の戦いでは清経の笛を取りに戻ったために退却に遅れ、呼び止めた熊谷直実と戦い、武士として命を落とします。
平知盛(たいら の とももり):木村昴
宗盛の弟。豪快な人物で重盛の死後には、宗盛の補佐役となります。
平重衡(たいら の しげひら):宮崎遊
宗盛、知盛の弟。重盛の死後も、その遺児たちを気にかけている。文武に秀でた武士であるが、戦いの中で寺社を焼いてしまったことを悔いている面ももっています。一ノ谷の戦いでは捕らえられ、頼朝の前に引き出されるが、頼朝には「牡丹の花」のようであると評されます。
平忠度:中村和正
平行盛:真木駿一
平教経:武田太一
平高清:和多田美咲
夜叉御前:木野日菜
藤原輔子:河瀬茉希
新大納言局:陶山恵実里
(朝廷)
後白河法皇(ごしらかわほうおう):千葉繁
当代の治天の君。今様を好み、謡い過ぎで喉を傷めるほど。清盛と対立しているが、重盛のことは何かにつけて信任しており、徳子も評価しています。一方で策謀に長け、平家都落ち後には三種の神器奪還のため策を練る。徳子は「自分を脅かしたものをたやすく許す方ではない」と評している。
高倉天皇(たかくらてんのう):西山宏太朗
後白河法皇と滋子の子。名は憲仁(のりひと)。天皇であるが父と清盛に圧されていた。徳子が入内した後も、小督局など他の女性とともに過ごすことが多かった。後に徳子の存在に気後れを感じていたと語っています。
安徳天皇(あんとくてんのう):佐藤美由希
高倉天皇と徳子の間に生まれた皇子。法皇幽閉後に天皇として即位する。びわになついている。
平滋子(たいら の しげこ):坂本真綾
後白河法皇の妻で時子の妹。高倉天皇の母。法皇の相談相手であり、深く愛されていたが早逝する。
伊子(建礼門院右京大夫)(いこ):本泉莉奈
徳子の官女。子供時代から資盛が思いを寄せており、福原遷都頃に恋人となる。平家の都落ちには同行せず、京に残る。
以仁王:藤原大智
藤原基房:美斉津恵友
後鳥羽天皇:木野日菜
藤原成親:森宮隆
藤原成経:中村源太
西光(藤原師光):土師孝也
俊寛:土田大
基康:橘潤二
(武士)
源頼朝(みなもと の よりとも):杉田智和
源氏の棟梁。文覚によって法皇の院宣を伝えられ、新しい世を築くために挙兵する。周囲の声に押されるところがあり、ほとんど片言のような喋り方をします。重衡と面会した際にはその助命を考えますが、妻政子の言葉により平家の族滅を決断してしまいます。
源義経(みなもと の よしつね):梶裕貴
頼朝の弟。天才的な軍略家でもあり、三草山・一ノ谷・屋島・壇ノ浦では平家の軍勢を次々に打ち破っていきます。
北条政子:甲斐田裕子
頼朝の妻。気が強く、頼朝に平家追討の発破をかける。
源義仲(木曾義仲) (みなもと の よしなか):三宅健太
木曾源氏の棟梁。自然の中で暮らす野生児のような武士である。倶利伽羅峠の戦いで平家を打ち破りますが、京で傍若無人に振る舞ったあげく、義経によって討たれることになります。
中原兼遠:多田野曜平
今井兼平:落合弘治
巴御前:鷄冠井美智子
源頼政:浦山迅
源仲綱:大泊貴揮
武蔵坊弁慶:大塚明夫
土肥実平:木下浩之
熊谷直実:田中美央
藤原忠清:楠大典
斎藤実盛:斎藤志郎
緒方惟栄:高橋研二
瀬尾兼康:井川秀栄
武里(たけさと):新祐樹
斎藤五:観世智顕
(その他)
祗王(ぎおう):井上喜久子
清盛の寵愛を受けていた白拍子(素拍子)です。清盛の心変わりで遠ざけられたが、新しい愛人である仏御前の話し相手に呼び戻されます。母親の面影を見たびわになつかれます。のちに母親、妹の妓女とともに出家します。同じく出家した仏御前を迎え入れ、4人で読経三昧の余生を送る。平家の屋敷を出たびわが、訪ねた頃には、仏御前や母とともに亡くなっていると言及されます。
静御前(しずかごぜん):水瀬いのり
白拍子の少女。同じ白拍子の月・あかりとともに行動している。法皇の開いた宴で、義経と出会い、相思相愛となります。
浅葱の方 (あさぎのかた):大原さやか
幼い頃に生き別れとなったびわの母です。もとは白拍子で、びわと同じ目をしていた。夫らを捨て、越後平氏城資永の妾となったが、資永が怪死したため京に戻り、丹後で隠棲しています。びわの様子は、その目でずっと見ていたと語りますが、現在では視力を失っています。
びわの父:杉村憲司
盲目の琵琶法師で娘のびわを連れて放浪していました。びわが男の格好をするのは父の言いつけであり、重盛は娘を守るためであったと考えている。人々を虐げる平家の侍への非難を呟いた娘を庇って命を落とします。
明雲:ボルケーノ太田
文覚:佐々木睦
牛頭:伊原正明
馬頭:室井海人
妓女:大地葉
月:小橋里美
あか:松浦愛弓
滝口入道:田村真
【平家物語・各エピソードタイトルリスト】
第一話:平家にあらざれば人にあらず
第二話:娑婆の栄華は夢のゆめ
第三話:鹿ケ谷の陰謀
第四話:無文の沙汰
第五話:橋合戦
第六話:都遷り
第七話:清盛、死す
第八話:都落ち
第九話:平家流るる
第十話:壇ノ浦
第十一話:諸行無常
【平家物語・制作スタッフ】
監督の山田尚子さんが京都アニメーション以外で作品を手掛けるのははじめてとなりました。また、キャラクター原案の高野文子さんも、アニメーション作品のキャラクター原案を務めるのは本作がはじめてとなります。
原作:古川日出男(翻訳) 『平家物語』河出書房新社〈池澤夏樹=個人編集 日本文学全集〉、2016年12月8日。ASIN B07B5Y7NCZ。ISBN 978-4309728797。
監督:山田尚子
シリーズ構成・脚本:吉田玲子
キャラクター原案:高野文子
キャラクターデザイン・総作画監督:小島崇史
プロップデザイン:寺尾憲治
美術監督:久保友孝
美術設定:久保友孝、片山久瑠実(第一~五話)、大森崇(第二~五、七、八話)、宮野隆(第七話)、島田碧(第七、八話)
動画監督:今井翔太郎
色彩設定:橋本賢
撮影監督:出水田和人
編集:廣瀬清志
音響監督:木村絵理子
音響効果:倉橋裕宗
歴史監修:佐多芳彦
琵琶監修:後藤幸浩
音楽:牛尾憲輔
音楽プロデューサー:中村伸一
音楽制作:ポニーキャニオン
プロデューサー:竹内文恵、有田真代、尾崎紀子、中村伸一、チェ・ウニョン
アニメーションプロデューサー:崎田康平
アニメーション制作:サイエンスSARU
制作:「平家物語」製作委員会(アスミック・エース、フジテレビジョン、bilibili、ポニーキャニオン、サイエンスSARU、電通、BSフジ)
★『平家物語』はUーNEXTで視聴できます。
👆TVアニメ「平家物語」オープニング映像:羊文学「光るとき」
♬「光るとき」
羊文学によるオープニングテーマ。作詞・作曲は塩塚モエカ、編曲は羊文学、F.C.L.S.。
👆TVアニメ「平家物語」エンディング映像:agraph feat. ANI(スチャダラパー)「unified perspective」
♬「unified perspective」
agraph feat.ANIによるエンディングテーマ。作詞はANI、作曲・編曲はagraph。
【平家物語・古文、原文】
『平家物語』の原文・現代語訳1:祇園精舎の鐘の声~を記してみました。
《祇園精舎》
祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり、沙羅双樹の花の色、盛者必衰(じょうしゃひっすい)の理(ことわり)をあらはす。驕れる者久しからず、ただ春の夜の夢の如し。猛き人もつひには滅びぬ、ひとへに風の前の塵に同じ。
遠く異朝(いちょう)をとぶらふに、秦の趙高(ちょうこう)、漢の王莽(おうもう)、梁(りょう)の朱い(しゅい)、唐の禄山(ろくざん)、これらは皆旧主先皇(きゅうしゅせんこう)の政(まつりごと)にも従はず、楽しみを極め、諌め(いさめ)をも思ひ入れず、天下の乱れん事をも悟らずして、民間の憂ふる所を知らざりしかば、久しからずして亡じにし者どもなり。
近く本朝を窺ふ(うかがう)に、承平の将門、天慶の純友(すみとも)、康和の義親、平治の信頼、これらは驕れる事も猛き心も、皆とりどりなりしかども、間近くは、六波羅の入道前の太政大臣平の朝臣清盛公と申しし人の有様、伝へ承るこそ、心も言(ことば)も及ばれぬ。その先祖を尋ぬれば、桓武天皇第五の皇子、一品式部卿葛原の親王(いっぽんしきぶかずらはらのしんのう)九代の後胤(こういん)、讃岐守正盛(さぬきのかみまさもり)が孫、刑部卿忠盛(ぎょうぶきょうただもり)の朝臣の嫡男なり。
かの親王の御子、高視の王(たかみのおう)無官無位にして失せ給ひぬ。その御子高望の王(たかもちのおう)の時、初めて平の姓を賜はつて、上総介(かずさのすけ)になり給ひしよりこのかた、忽ち(たちまち)に王氏を出でて人臣に連なる。その子鎮守府の将軍良望(よしもち)、後には国香(くにか)と改む。国香より正盛に至るまで六代は、諸国の受領(ずりょう)たりしかども、殿上の仙籍(てんじょうのせんせき)をば未だ許されず。
《注釈・意訳》
祇園精舎とは古代インドの須達長者という富豪が、仏陀(釈迦)のために建立した寺院であり、その寺の鐘の音はすべてのものが移りゆき滅んでいくという諸行無常の響きを持っている。仏陀が入滅する時に生えていた沙羅双樹の花の色も、栄えた者はいずれ必ず滅びゆくという無常を示している。今、驕っている者もその隆盛の時期は長くない、ただ春の夜の束の間の夢のようなものだ。強力に見える人間も最後には滅びてしまうのだ、ただ風の前で吹き飛ばされていく塵のようなものに過ぎない。
遠い外国の事例を見てみても、秦の趙高、漢の王莽、梁の朱い、唐の禄山といった逆臣は、旧主の命令にも従わずに、多いに短期間の栄耀栄華・贅沢三昧を楽しんだものだが、周囲の諌めも聞かず人々の苦しみも無視したために、あっという間に滅亡の道を辿っていった。
近いわが国(日本)の事例を見てみると、承平の乱の平将門、天慶の乱の藤原純友、康和の義親、平治の信頼など、その奢り方や猛々しい心はそれぞれだったが結局は滅んでいった。もっとも近い例では、六波羅の入道と呼ばれて前の太政大臣にもなった平清盛という人物がいるが、この人について語り伝えられている事は、心も言葉も及ばないほどの内容である。その先祖を遡っていくと、桓武天皇第五の皇子である一品式部卿葛原の親王の九代の後胤であり、讃岐守正盛の孫、刑部卿忠盛の朝臣の嫡男にまで行き着くという。
この親王の御子である高視の王は無位無官のままで亡くなってしまった。その子の高望の王の時に初めて『平』という姓を賜り、上総介になったのだが、この時から王族から抜け出て人臣に連なったのである。その子の鎮守府将軍の平良望が、後になって名前を平国香と改めた。国香から正盛に至るまでの六代は、諸国の受領を務めたのだが、殿上人の仲間に入ることは遂に許されなかったのだった。
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