【金田一少年の事件簿・感想】
本作ではまず感想から記したいと思います。本作は、当時ヒットした原作の金田一少年の事件簿のアニメ化ということで期待半分で観ていましたが、なかなかのよくできた作品だと当時感心しました。やはりテレビアニメだと放送時間の枠がある。事件構成を分割すると視聴者の関心を惹き続けられるかという問題があります。
しかし、放送形式に変化をつけていて(クレジット、アイキャッチ、次回予告など)飽きさせなように工夫がされていてよかったと思いました。本作で起きる事件の犯人像もやはりやるせない状況や愛憎の果て起きる事件がほとんどで、これは、やはり金田一というタイトル名のDNAをしっかり継承されているなと思いました。
ただ、直接的な死体の描写を避けて近距離からシルエットのように見せたり、身体の比較的無事な一部分のみを見せるといった配慮を行っていたり、また、一部の話においては原作で死亡した人物が、アニメでは一命をとりとめるという展開があって制作スタッフの視聴者に不快な思いをさせまいとする表現変更に対する制作努力は称賛に価すると思います。
そして、日本には推理小説という一つのジャンルが、アニメという枠に進出できたということが確認できる作品でもあります。
【金田一少年の事件簿・制作沿革】
1996年12月14日、劇場アニメ第1作『オペラ座館・新たなる殺人』で初のアニメ化、全国東映系でロードショーされる。ノベルス版を原作とした劇場アニメは、原作ファンからの高い評価を受けました(『金田一少年の事件簿 公式ガイドブック ファイナル ラストエピソード』、142頁、講談社、2001年、ISBN 978-4063343823)。この劇場アニメの人気を受け、1997年4月7日、テレビアニメ(第1シリーズ)がよみうりテレビ(ytv)・日本テレビ系列にて毎週月曜19:00~19:30(一部地域を除く)に放送開始。2000年9月11日まで放送されました。制作は東映動画(本放送中の1998年より東映アニメーションと社名変更)。
放送期間の途中からセル画からデジタルアニメに移行し、東映動画における最後のセル画制作となりました。また、第44話で登場人物紹介時の演出とBGMが変更されました。なお、サブタイトル表示時の効果音は第43話で変更されている。
【金田一少年の事件簿・事件簿放送の構成について】
長編の事件については、企画段階では二週のみ(前後編)で描くという案がありました。しかしそれでは絶対に描き切れないため、基本的には初期は三週、中期以降は四週で構成された。監督の西尾大介さんは「四週でも放送時間は正味80分なので、本当はもう少し欲しいくらいですけど」と語っている(『金田一少年の事件簿2 幽霊客船殺人事件』、320頁、講談社、1999年、ISBN 978-4062646932)。なお、視聴率が1週目、2週目、最終週とそれほど違わないため、東映動画のプロデューサーの清水慎司さんは「視聴者が長いストーリーについてきてくれている」との判断、1年目の秋から四週完結のストーリーが放送され、三年目には五週完結のストーリーも作られるようになりました。
「異人館村殺人事件」「首吊り学園殺人事件」以外の原作1期(FILEシリーズおよびCaseシリーズ)の長編作品は全てアニメ化されている。ノベルスもテレビアニメ終了後に発表された「邪宗館殺人事件」以外は全てアニメ化された。「R」の一期、二期共に原作と同じ「R」のタイトルを冠しているが、第一期の続編として未アニメ化だった事件から映像化していった為、原作「R」の映像化は「雪鬼伝説殺人事件」と「狐火流し殺人事件」のみである。
「嘆きの鬼伝説殺人事件」「出雲神話殺人事件」の2タイトルは、当時JR西日本が企画した『金田一少年の事件簿ミステリーツアー』が原作となっている(『名探偵コナン』においても同様の事例があります)。
「殺戮のディープブルー」は映画とテレビで二度アニメ化。映画版は、ほぼ内容がオリジナル、テレビ版の方が原作に沿った内容となっている。
「聖(セント)バレンタインの殺人」は原作「聖なる夜(クリスマス)の殺人」の舞台、トリックを使用しているが、ストーリー、登場人物、犯行動機などは異なり、ほとんどオリジナル作品。
基本的には最後の1話で犯人とトリック、動機などが明らかにされるが、「露西亜人形殺人事件」「薔薇十字館殺人事件」のように、犯人が明らかになった次週にトリックや動機を解明するというエピソードもある。
2007年に放映された1時間スペシャル及び『R』で字幕放送が実施。一は黄色、美雪は水色、剣持は緑色、その他の登場人物は白色になっている。
各事件の放送順序が原作の発表順序と異なるため、登場人物の登場時期・登場回数・設定や性格の違いなど、細かい変更点が多く見られる(例を挙げると、一部の警察関係者が原作で別の刑事が担当していた事件の担当として登場している、など)。
(反響・評価)
初回視聴率は、16.1%の高視聴率を記録し、放送終了までほとんど視聴率は落ちることはなく、安定した人気を保ち続けました。平均視聴率は14.8%、最高視聴率19.0%を記録した。
当時はドラマがヒット後に、アニメが放送される作品は非常に珍しいケースである。1995年及び1996年に堂本剛さん主演の実写ドラマが放送され、人気を博しており、余りにもその印象が強く「(ドラマ版で主演だった)堂本くんが出ないのに『金田一少年』なのか?」といった声もあったが、「原作そのままの絵で動く一ちゃんを見たい」という原作ファンの声もあり、その声に応えるべくアニメ化が実現した。
また、1996年から同じ局の次の時間帯ですでに放送されていた『名探偵コナン』と合わせ、「月曜7時のミステリーアワー」という触れ込みもあった(特別番組で江戸川コナンと共演したこともある)。
よみうりテレビのプロデューサーの諏訪道彦さんは「『名探偵コナン』の前枠に『金田一少年の事件簿』の企画が来たときには少々面喰らった。ミステリーを題材にしたアニメを重ねるのはかなりの冒険だった」と語っている。諏訪さんは、この二つの番組を「美味しいケーキ屋」に例えて説明しており「二軒の美味しいケーキ屋が並んで建ったら、お客さんはどちらかのケーキ屋に行くようになり、それぞれの店のお客さんは減ってしまうのではないか?」と懸念していたが、結果は「お客さんの奪い合いになるどころか、『ここに来たら確実に美味しいケーキが手に入る』という相乗効果理論により、お客さんは倍どころか3倍にという現象になったのです」と二つの番組の大ヒットに対して喜びのコメントをしている。
アニメ放送中は世間で様々な凶悪事件が発生しており、製作陣は神経質にならざるを得なかったと語っている。しかし前述のようにアニメ化に当たっての内容や演出の変更・カットといったスタッフの努力により、放送中は一度も抗議や苦情といったものは無かったという。(『金田一少年の事件簿 公式ガイドブック ファイナル ラストエピソード』、142頁、講談社)
視聴者層について、清水さんは「安定した人気を保つことができたのは、アニメの『金田一』を好んで見てくれる視聴者を開拓できたということ。視聴者のほとんどは小中学生だったと思うのですが、普段ワイドショーを見ている家庭のお母さんなども、子供が見ている横でついつい夢中になって、子供以上に熱心に見てくれるようになっていたようです」と見解を述べている。
第1シリーズのアニメ終了後も、第2シリーズの放送をファンは心待ちにしていたとされる。第2シリーズの放送は実に14年ぶりとなったが、諏訪道彦さんは「14年ぶりのアニメシリーズに着手するのには、実はかなりのハードルがあったことは事実です」と語っている。しかし視聴者からは予想以上の反響があり、当時のアニメ放送枠での最高視聴率を記録したことから「僕らが思ってる以上に金田一を受け止めて支持してくれる視聴者が、大勢いることがわかった」と感謝のコメントを発表しています。
【金田一少年の事件簿・製作スタッフ】
- 原案:天樹征丸
- 原作:金成陽三郎
- 漫画:さとうふみや(講談社「週刊少年マガジン」連載)
- プロデューサー:諏訪道彦(よみうりテレビ)、渡辺哲也(電通)、清水慎治(東映動画 → 東映アニメーション)
- プロデューサー補:秋山陽子(東映動画 → 東映アニメーション)
- アシスタントプロデューサー:斎藤朋之(よみうりテレビ)
- 製作担当:樋口宗久(第1話 - 第105話)、野田由紀夫(第69話 - 最終話)
- 音楽:和田薫
- キャラクターデザイン:荒木伸吾、姫野美智、香川久(第13話 - 第23話、第28話 - 第31話)、窪秀已(第24話 - 第27話、第32話 - 最終話)
- 美術デザイン:渡辺佳人
- 美術設定:内川文広、秦秀信(第24話 - 最終話)
- シリーズディレクター:西尾大介
- 撮影 → デジタル撮影:ACCプロダクション
- 録音:池上信照(タバック)
- 音響効果:片岡陽三(E&M、第1話 - 第15話) → 伊藤道廣(サウンドリング、第16話 - 最終話)
- 選曲:水野さやか(スワラ・プロ)
- 録音スタジオ:タバック
- 現像 → オンライン編集:東映化学 → TOVIC
- 企画協力:樹林伸(講談社)、都丸尚史(講談社)、菅原章(電通)
- 制作協力:東映(126話 - 最終話)
- 制作:よみうりテレビ、電通、東映動画 ➡東映アニメーション(第1話 - 第125話、第126話 - 最終話)
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