🔶今日のアニメの徒然小道は、『笑ゥせぇるすまん』(わらうセールスマン)の紹介するとともに、その特異なキャラクターを考察したいと思います。本作『笑ゥせぇるすまん』は、藤子不二雄Ⓐによる日本のブラックユーモア漫画作品です。またはそれを原作とするテレビアニメ、ドラマ作品をさしています。ここではテレビアニメ作を中心にお話してみるといたしましょう~。
【笑ゥせぇるすまん・その謎の概要】
「謎のセールスマン喪黒 福造(もぐろ ふくぞう)が、悩める現代人のちょっとした望みをかなえてやるが、約束を破ったり忠告を聞き入れなかった場合にはその代償を負わせる」という構想から成る一話完結のオムニバス形式となっています。本作の単行本の発行部数は、ブラックユーモア作品としては、1999年6月時点で累計350万部を突破しているのです。
藤子作品では珍しい青年漫画連載作品であり、比較的マイナーな存在であったが、1989年にテレビアニメ化されたのを皮切りにゲーム化、実写化など各種メディア展開も行われ、知名度を上げることになりました。テレビアニメとしては比較的遅い時間帯での放送であったが、当時の小中学生の間でも、あの『ドーン!!!!』という光景をよく目にしましたネ。
読者には、圧倒的な力を持つ者が、毎日をがんばって生きている一般人をあらゆる手法で闇に突き落とす、という終始救いのないストーリーが突き付けられるが、一過性のブラックジョークではなく、寓話としての読み取りが可能なようにも作られていました。
セールスマンである喪黒は、客に対して大きな力を与えるが、その代わりに客は一定期間などの条件付き、あるいは生涯を通して契約を守る必要が生じてしまうのです。多くのエピソードの中で、客が喪黒と交わした約束を破ったり、喪黒からの忠告を聞き入れなかったことから破滅を迎え、喪黒が客の素行に対して呆れるという構成になっているのです。しかしその一方、喪黒が、自分との約束を破ったと客を断じる理由には強引なものが散見され、客の自業自得ではなく、喪黒自身がヤクザ紛いの手法で因縁を付けて客を破滅に追い込むことも珍しくなかったのです。その事は、アニメ版第56話「極楽風呂」のラストシーンでの喪黒の台詞(「あたしだって、たまにはいいことするんですよー!」)からも明らかです。この作品では、様々なエピソードを通して、人間が社会生活を営む中で露見しないよう包み隠している、いい加減さ、愚かさ、醜さ、弱さなどの負の部分をあらゆる側面から暴き出し、最も醜悪な形で視聴者の眼前にぶちまけているのです。
★藤子不二雄Ⓐさんは、本年令和4年4月8日にお亡くなりになられました(88歳)。大変残寂しいことです。4月12日19:30~『クローズアップ現代』(NHK総合)で、「人間って面白い!藤子不二雄Ⓐ秘蔵映像で迫る”漫画人生”」の中で、こうも語っておられました。「身近な日常を書き続けることって、けっこう精神的にきつくて逃げ出したくなることが多かったんですよ~。でもこの喪黒 福造は、自分の心ままにというか、素直に書けましたね。」と語っていたことがすごく印象に残りましたネ。
きっと、藤子不二雄Ⓐさんのこころは、いつもすきまだらけだったのでしょう。お酒の大好きな方でいつもとなりの席には喪黒 福造がお相手していたのでしょう。
【笑ゥせぇるすまん・その謎のあらすじ】
「老若男女、この世はつきつめていけば、心の寂しい人ばかり。そんな心のすきまを埋め、あらゆる願いごとをボランティアでかなえます。私の名は、喪黒福造といいます。」
黒ずくめで常に笑みを浮かべながら、不気味な雰囲気を醸し出し、「お客様」に該当する人物を見つけると、その「ココロのスキマ」を埋めるためのサービスを提供しようと、それに伴う「約束事」を厳守するように促します。提供されたサービスを実行し、その「ココロのスキマ」が埋まると、「お客様の満足」となって、それが喪黒の報酬となるのです。
しかし、約束を破ったり、欲張って更なるサービスを要求してきたりする「お客様」に対しては「契約違反」とみなし、ペナルティとして人差し指で「お客様」に向かって指を差し、「ドーン!!!!」と叫び、破滅に追いやるのでした。
【笑ゥせぇるすまん・喪黒福造の正体は何だろう?】
原作者藤子不二雄Ⓐさんに言わせれば、喪黒福造は「メフィストフェレスのイメージを持ってもらえれば」と語っています。コミックスのあとがきには「怪人物」という作者の言葉が載っていました。2017年の最新版のアニメでは「人間ではないもの、しかし悪魔などの類でもない存在」と述べています。メフィストフェレスとは、キリスト教の悪魔のひとつといわれていて、ゲーテの戯曲で有名なファウスト博士の伝説に登場してきます。キリスト教の民間伝承に伝わるれっきとした悪魔とあります。諸説ありますが、その名は【光を愛さない者】を意味していると言われています。名前が長いため、メフィストと略されて呼ばれることがあります。
人は様々な縁にふれて、心の状態は変わりやすいもの。さっき友達と喧嘩して不愉快になってたと思えば、好きな人に逢うと心もときめくもの。そんなすき間を見つけるのが、喪黒福造の特別な能力なのかもしれません。(*_*;
【笑ゥせぇるすまん・制作、放送データ】
原作:中央公論「笑ゥせぇるすまん」(藤子不二雄Ⓐ著)
総監督:クニトシロウ
監督:米谷良知
脚本:梅野かおる
美術監督:宮野隆
キャラクターデザイン:岡迫亘弘
作画監督: 岡迫亘弘、野口大蔵
録音監督:大熊昭
撮影監督:山田廣明→大神洋一
効果:柏原満
音楽:田中公平
監修:鈴木伸一
プロデューサー:別紙壮一、児玉征太郎、井上博
文芸:金井浩
タイトル:道川昭
制作デスク:小倉久美
アニメーション制作:シンエイ動画
製作:TBS
放送期間: 1989年10月10日~1992年9月29日 全103話+スペシャル23話(合計全127話)
放送局:TBS
【主題歌】
特番と再放送のみ。
♬オープニングテーマ - 「孤独の唄」
作詞 - 藤子不二雄Ⓐ / 作曲 - 伊藤薫 / 編曲 - 桜庭伸幸 / 唄 - 梅沢富美男(ポリスター)
♬エンディングテーマ - 「ココロの唄」
作詞 - 藤子不二雄Ⓐ / 作曲 - 伊藤薫 / 唄 - 梅沢富美男(ポリスター)
